ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
翼が漂いながら病室を出ると、そこに岸辺亘が立っていた。


髪の量はだいぶ減り、身体は一層小さくなっていた。杖をつき、病室の入り口からそっと凛を見つめている。

彼が落とした影に、翼は収まり、羽を得てばたつかせた。
黒いマントを羽織った死神の姿になり、岸辺亘の隣に立つ。


「やあ、五十年ぶりだね」

岸辺亘の声は変わらず、よく通った。まるで少年のような話しぶりも変わらない。

「岸辺さん、小さくなったな」

「ああ、君がのんびり漂っている間も僕は働き詰めさ。でももう僕も今日で晴れて引退だ」

「そうなのか」

「後継者がね、見つかったんだ」
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