ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
凛の傍らにいたショウが、立ち上がった。

彼女の額にキスをすると、岸辺と翼の方へと近づいて来る。ショウはまっすぐに翼を見つめた。彼には、翼の姿が見えている。翼はじっと体を動かせないまま息をひそめた。

「見えるのか?」
翼がショウに尋ねた。

「見えます。前から、ずっと」
ショウはじっと翼の目を見たままうなずいた。

翼は、ショウが赤ん坊のころの、ある夜の出来事を思い出した。
< 163 / 167 >

この作品をシェア

pagetop