ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
夜中、なかなか泣き止まなかったショウを凛が必死であやしていたときのことだ。その肩越しに、翼がこの赤ん坊を見つめたのだった。
そのとき、ショウと目が合った気がした。するとショウは泣き止み、表情を緩ませた。そのあとすぐに、目元をとろんと蕩けさせて、凛の肩に頭を預け、深い眠りについたのだった。

ショウには、翼のことが、ずっと見えていたのだ。

───俺の、息子。
翼は、唇を噛んだ。向かい合ったその男は、今や年齢は五十となっている。背が高く、翼とよく似た鉄紺色の瞳をしていた。

「母を、たのみます」
ショウは翼をまっすぐに見据えて言った。その目の淵は赤く染まり、唇はかすかに震えていた。
< 164 / 167 >

この作品をシェア

pagetop