ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
左には東京タワー、右にはスカイツリーが白い灯りをくるくると旋回させて、まるで鼓動を刻んでいるように見えた。

───東京は、生きている。私だけを一人取り残して。



したたか飲んだシャンパンのせいか、ベランダの手すりが斜めに見える。いつもより低く感じるそれに足をかけた。

手すりの上に立ち、光の粒がちりばめられた地上を見下ろした。

───待って。こんな馬鹿なことはいけない。こんな最期、絶対に嫌。一体何を血迷ったんだろう。

急に酔いが醒めて我に返った。
手すりの上でメトロノームのように体を大きく左右に振りながら、くるりと部屋の方を向いた。細い手すりの上でかろうじてバランスを保っていた凛の体は、かすかなビル風に足元をすくわれた瞬間、ベランダの外側に滑り落ちた。
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