ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「落ちる」

刹那、激しい後悔が稲妻のように頭を貫いた。

ものすごい吸引力で体が落下する。さっきまで立っていた柵が、眼前をよぎる。

「いや」


声にならない叫びをのどに詰まらせて手足で空を掻くと、バシッと音がして、手首を思いきり掴まれた。

「しっかりつかまれ」

手を掴んで凛を見下ろすだれかが、そう叫んでいる。

さっきまで、部屋には凛以外誰もいなかった。鍵もかけてある。なのに、そのがっしりとした手の主は部屋の中からたった今走って出てきたかのようだった。
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