ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした

救いの手

男は唸りながら凛の腕をつかみ上げ、ビル風にあおられて揺れる身体を引っ張り上げた。

手すりに胸とお腹をこすりつけながら、ベランダの床になだれ込むようにして引き戻された凛は、男の長い腕に抱きしめられ、そのがっしりとした胸板に頬を着けた。

男の顔を見上げるが、会ったこともない男だ。

「ああ、俺はなんてことを」

男は凛々しく整った眉をひそめ、舌打ちをした。

「お前は何をしでかしたかわかっているのか」

鋭い目つきで睨まれ、低い冷ややかな声で責められた凛は、怯んで男から身を引きはがした。

「すみません、これくらいのことで死のうだなんて」
「ちがう。お前は俺を、人間に貶めたんだ。お前のせいで俺のキャリアは台無しだ」

ベランダで膝をついた男は、自分の手のひらを見つめたり、自分の頬をさすったりして、ため息をついた。

「貶めたって・・・一体何の話を?」

凛は男の言っていることの意味がさっぱり理解できなかった。

「自殺しようとした私を、怒ってるんですよね?」
「そうじゃない。死ねばよかったんだ」

男の言葉に、背筋に氷を落とされたような感覚に襲われた。
その目は胸にまで突き刺さりそうな冷徹さで、凛を睨み付けている。

「わかりました、じゃあ死にます」

凛は再び手すりに手をかけた。が、男は凛のことを見ようともせずに落ち着いた声で言った。

「お前には無理だ。そんな力はない」
「なんなんですか、死ねばいいとか、死ぬのは無理とか。だいたい、助けてなんて頼んでません」

そう言った直後、凛は先ほどから感じていた違和感の原因が分かって息を呑んだ。

「あなたは・・・なんで裸なんですか」

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