ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
確かに凛は、仕事には真剣に打ち込んでいた。夢である企業に就職が決まり、凛は会社のために多少の無理なら厭わないという思いがあった。だがそれは今に始まったことではなく、拓斗がただの同僚だったころから同じだから、彼はそれをよく理解していると思っていた。

夏美は「自分のせいでこうなった」と口では言っているが、拓斗への接し方を非難されている気がするのは思い違いだろうか。

色々なことに納得できないまま、凛は自分の恋人を奪った女をなぜか必死になだめる羽目になったのだった。

「夏美は悪くない」、そう彼女に言って聞かせたものの、オフィスに戻って落ち着きを取り戻すと、どうして私が略奪者である夏美を慰めなければならなかったのか、泣きたいのは自分の方ではないか、と我に返った。

夏美との間には、こういったちぐはぐな出来事が往々にして起こるのだが、これも一つの友達関係なのかと凛はこれまで自分を納得させてきた。

これが本当の友情なのか、と今更ながら疑問がよぎった。
< 27 / 167 >

この作品をシェア

pagetop