ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
でも、小さいころからの大切な親友との関係を揺さぶる気にはなれなかった。


その夕方、エレベーターホールで夏美と拓斗に鉢合わせしそうになった凛は、思わず壁に身を隠した。この事態に及んで三人で顔を合わせ、何をどう話したらよいのか凛にはわからなかった。

エレベーターが到着するまでの間の二人の話し声は、姿を隠した凛の耳まで届いた。


「今日昼休みに私たちのこと話したら、凛、すごく怒ってた。もう拓斗の顔も見たくないって言ってた。私が拓斗の気持ちを代弁しようにも、凛は聞き入れてくれなかったの」

───顔も見たくない、なんて私、言ってないよ?
凛は夏美の嘘に、顔から血の気が引くのを覚えた。
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