ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「はい。私は夏美の前でそんな風に感情的になったことはないんです。
なぜなら私は、自分が怒ったり悲しかったりしても、私自身その感情を把握できないから。
もやもやと胸の中に、はっきりしない気持ちが渦巻くだけで、表には出ない、というか、いつからか、出せなくなったんです。
だから、怒ったり、取り乱したりを、しないというより、できないんです」

突然現れた正体不明の男を前に、凛自身が不思議なくらいに素直に、自分のことを打ち明けていた。
男が尋ねる。

「遠田夏美は親友なのに、彼女に感情を示そうと思ったことはないのか」

「ないです。だってあの子は、私のことを心底心配なんてしていないから。私の本当の気持ちを解りたいなんて、思ってないから。あの子はいつも、可哀想な子を演じて近づいてきながら、私から大事なものを奪い取っていくだけです」

そう言って凛はハッとして顔を上げ、死神を見つめた。
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