ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
自分の口からこぼれた言葉に、自分自身が驚いていた。自身の胸の内にこれほどの夏美に対する憎悪があるとは気が付いていなかった。

「恋人の他にも、奪われたものがあるのか」
「大学時代の彼を奪われたこともありました。でも一番悔しいのは、仕事を奪われたことです」
「仕事?詳しく話してみろ」

凛は息を吸った。これまで誰にも打ち明けることができずにいた社内での出来事を、凛は話し始めた。まるで胸のつかえが取れたように、堰を切って言葉が溢れ出した。


もともと凛は、巨大な都市計画事業を動かす人物をサポートする仕事がしたくて鳳条建設に入社した。

秘書の業務をこなすために外国語を学び、ビジネススクールにも通った。とれる限りの資格も取得した。そうして手にした、憧れの社長秘書室での仕事だったが、たった一年で、花形と言われるそのセクションからあっけなく放り出されることになった。
理由は、上司をメールで誘惑した、というものだった。凛にとっては全く身に覚えのないことだった。
< 33 / 167 >

この作品をシェア

pagetop