ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした

その男とはあれをやったのか

「それで、鳥海拓斗とは性交したのか」
「えっ」

凛は弾かれるように死神から離れ、その顔を見上げた。

寝る前の歯磨きは済んだのか、というような調子で死神は言って、なんの罪もないとわんばかりの澄んだ瞳で凛を見ている。

これほどまでに懇切丁寧に心の機微まで吐露させておきながら、質問はそれだけなのか、と呆れずにはいられなかった。
が、美しい睫毛を伏せて凛を見下ろし、小首をかしげるその顔を見たら、つい正直に答えてしまった。

「ええまあ、付き合ってたからそれなりに」

「俺はまえから、性交というものを人間界で目にする機会があって、どんなものかと興味があった。どうせ人間になってしまったのだから、いっそのこと体験したいと思う。凛、その男と別れたのなら、俺と性交しろ」
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