ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
男はさらりととんでもないことを言ってのけた。凛はしばらく返答に詰まって男の顔を見つめていたが、その甘い顔立ちに屈服するように肩を落として答えた。

「あまり、“性交しろ”っていう誘い方は、ないと思います」

その誘い自体を拒むのではなく、言い方の問題なのか、と凛は自分自身の軽さに呆れてしまった。

「じゃあ、なんていえばいい?」

「そうですね・・・あまり、言葉で誘う事ってないかもしれません」

凛は言いながらどぎまぎした表情で目を伏せた。きちんとした手順を踏んで私を誘ってくださいと言っているようなものだった。

衝動で、危うく命を落とすところを、突然現れて救ってくれた理想の容姿の男。
男は手痛くフラれた傷心話や、これまで誰にも話せなかった辛い過去を真剣な顔で訊いてくれた。
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