ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
昨日の警官が様子を見に来たのだろうか。

あの時は侵入者を不審者扱いして追い出そうと必死だった。
それが今はその相手と肉体をぴったり絡み合わせて快楽に耽っている。

この想像は警官の下世話な趣味を刺激する材料になりこそすれ、凛にとっては想像だにしなかった事態だった。今更どんな顔をして警官に会えばいいのだろう。

恐る恐る画面を覗き込んだ。

そこには、定年退職後に再雇用で会社に勤める初老のサラリーマン、といった雰囲気の男が、柔和な顔つきで立っていた。

「おはようございます。朝早くすみません。僕、こういうものです」

六十がらみの茶色いスーツ姿の男は、丸みを帯びた若々しい高い声で言って画面の前に名刺を掲げて見せた。
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