ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「やあ、ここにいたか」

岸辺は言って、首をかしげている凛を背に靴を脱いでサッサとリビングへと入って行くと、サイズの合わないスエットを着て立ち尽くす男を眩しそうな顔で見上げた。

「人間としての姿かたちはね、化身直前に自分で描いたイメージから出来上がるんだ。君の持っていたイメージはつまり、細密で美しく、隙がなかったということだね。素晴らしい」

岸辺は男の方を手で指し示し、男の頭からつま先へとその手をすうっと下ろした。

死神の青みを帯びた黒い瞳に、きらりとひらめきがよぎった。
「お前はもしかして」

「そう。そのもしかしてだ。死神の領域と人間の領域の架け橋だよ。君は昨夜、人間の自死を自らの意志で妨害したことに、間違いないね」
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