ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
岸辺が宣言するように高らかに名前を告げると、死神は喉の詰まりが取れたような、解き放たれた表情をした。

「俺は、黒木翼」

「処分、というと聞こえは悪いが、長期休暇だと思って羽を伸ばして、普段できない経験を楽しむといいよ。海外旅行だって、結婚だってできるんだから」

岸辺はそう言うと、凛の方をちらりと見た。

住まいが見つかるまでの間、翼は凛のマンションに寝泊まりすることで話が付いた。

衣類を調達するために、岸辺が翼の体の採寸を始めたタイミングで、凛の出発時刻となったので、二人を置いてマンションを出た。

不安も疑問も山積した状態だったが、仕事納め間近の職場のほうにもやるべき仕事が山積している。



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