ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした

クリスマスの朝 オフィスにて

新宿の高層ビル群のなかでひときわ目立ったデザインでそびえる鳳条ビル。

靴音を響かせてホールを横切る人波が、株式会社鳳条建設の入り口ゲートへと吸い込まれていく。ICカードをタッチして、列をなしてゲートをくぐっていく。

凛は人の流れに溶け込んで社屋に入り、エレベーターの到着を知らせるブザー音が鳴り響くドア前で列に並んだ。

フロアに降り立ち、廊下を歩いていると、夏美が後ろから小走りで追いかけてきた。

「凛・・・昨日はごめんね。突然あんな話をしちゃって」

夏美は大きな瞳で上目づかいに凛を見上げ、許しを請う視線を向けた。
さりげなく髪を耳にかけた時、左手にダイヤの指輪が光っているのが見えた。写真に写り込んでいたブルーの包みの中身だろう。

夏美から「拓斗と別れて欲しい」と言われたのは昨日の昼のことだったが、今となってはずいぶん昔のことのように思えた。
< 50 / 167 >

この作品をシェア

pagetop