ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
昨晩から朝にかけて激しく抱き合った余韻で、両腿のあわいは今もまだ火照って濡れている。ふと記憶がフラッシュバックのようによみがえるたびに、体が敏感に反応してしまう。

凛は体に充満する淫靡な記憶をまき散らそうと、給湯室に移動した。
ディスペンサーからカップにコーヒーを注ぐ間、両脚を摺り寄せ合い、衣擦れのように肌をかすめていく快感に、吐息を小刻みに震わせた。

あの男の肌が恋しい。
熱を帯びた吐息が、凛の唇を温めた。死神とのキスを思い出しながらそっと指先に唇を触れると、ぞくっと下腹部に甘い稲妻が走った。

「凛」
突然呼ばれて、凛は飛び上がって振り返った。

給湯室の入り口に鳥海拓斗が立っていた。ほっそりと長い手足を持つ拓斗は細身のスーツをまるでマネキンのように美しいシルエットで着こなしている。
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