ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
広いロビーの意匠を凝らした内装を、ため息をつきながらうっとりと見まわしていた凛は、ふとチェックインカウンターに立つ見慣れた姿に目を止めた。

「拓斗」

死神は凛の視線を追って拓斗を見定め、足早に近づいていく。凛は慌てて死神のあとを追った。

チェックインを終えたらしい拓斗が振り返ると同時に、死神は目の前に立ちはだかった。

拓斗より頭一つ大きい死神は拓斗を見下ろすようにして名刺を差し出した。

「お前は向こうに行っていろ」

肩越しに睨まれ、突き放された凛は、逃げるようにしてロビー中央のクリスマスツリーの下に立った。
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