ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
スイートルームはこのホテルに十五室あるデラックスルームよりもはるかにランクが高く、二部屋しか存在しないはずだった。

死神の手によって夏美から強引に引き剥がされた凛は、背後に残した夏美を振り返った。

立ち尽くす夏美は、愕然とした表情で死神の背中を見つめていた。


スイートルーム専用階にむかうエレベーターに乗り込むなり、死神は凛の体を壁に押し付け、あごを指で引き上げて双眸を見つめた。

死神の目の奥に滾る欲情の炎がちらついている。そしてその炎の揺らめきに彼自身が戸惑うように、瞳を左右に揺らした。

「ああ。俺は一体何をしてるんだ。お前のせいで、俺はめちゃくちゃだ」

言うなり貪るようなキスをした。凛の胸が早鐘を打ち、耳の先まで赤く染まる。戸惑いながらもその手を死神の背中に回し、彼の熱っぽい舌を受け入れて絡め合わせた。
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