ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
唇を離すと死神は再び凛の瞳をじっと見つめた。

「お前のことが一日中頭から離れないんだ」

死神は悔しそうに眉をひそめ、凛の頬を指先で撫でた。

「死神さん・・・」
「翼と呼べ」
「翼さん・・・」

エレベーターのベルが鳴りドアが開いた。死神は目の前に現れたスイートルームの両開きのドアを押し開けた。

十人は座れるリビングスペース。ダイニングバーとキッチンがしつらえられた部屋からは、ぐるりと見渡せるほどの広い夜空が見えた。東京湾を囲んでちらちらと光輝くビル群が立ち並んでいる。上空を飛ぶ飛行機が、光を点滅させて遠くの都市へと飛び立つのが見える。
< 63 / 167 >

この作品をシェア

pagetop