ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「所持金と銀行の貯金をすべて預かってきた。足りない分は実家に頼んで年内に返済するという書面を取り交わした。これでお前の金は戻ってくる」

死神は凛をベッドに座らせると、ポケットから書類と厚みのある封筒を取り出して凛に差し出した。

「翼さん、私のお金を取り返すために準備してくれてたんですね。ありがとうございます」

凛は封筒を胸に抱き、深く頭を下げた。

「でも、拓斗、所持金まで無くなってしまって、大丈夫でしょうか」

「あいつにはもう新しい恋人がいるんだからその女が助ければいい。凛がそうしていたように」

一文無しになった拓斗を目の前にして泣きわめく夏美を想像した。後ろめたい気持ちもあったが、少しばかり気持ちが晴れやかになったのも事実だった。
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