ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした

12月26日クリスマスが明けて 夏美の後悔の矛先

力が入らない両脚をなんとか動かして、凛は出社した。

社屋入り口のゲートの脇で、夏美が凛を待ち構えていた。ゲート手前の化粧室に引かれるように連れられ、洗面台に向かって並んで立つと鏡越しに見つめ合った。

「どうして、言ってくれなかったの、拓斗のお金のこと」

夏美はすでに目の淵が赤かった。上瞼もいつもより腫れていて、昨晩の修羅場がうかがえた。

左手に、光る指輪はなかった。

「拓斗の個人的なことは、拓斗本人が夏美に言うべきだと思ったから」

凛が答えると、夏美はふん、と鼻で笑って鏡の中の凛を睨んだ。
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