ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
玄関にちょこんと並んだピンク色の小さなパンプスで、夏美が来ているのだとわかった。

「おじゃましてまぁす」

夏美は白いブラウスの袖をめくって、手を拭きながらひょいとキッチンから顔を出した。

「夏美が夕飯を作ってくれた」

翼はカウンターでビールを飲んでいる。すでに呼び捨てなのは、一気に距離が縮んだせいか、本来の上から目線のせいなのかは分からない。

翼の目の前には凛が冷蔵庫に保管しておいた小松菜やトマトを材料にした色とりどりの料理が並んでいた。


「翼さんが一人だったら夕食に困るかなって思って。ちょうど出来上がったところだけど凛も食べる?」
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