ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「なんだこの痛みは」

男は体を起こすとベッドに座った。

「人間の体は溶けそうに心地良くなったかとおもえば、こんどは折れそうに痛くなったり、まったく面倒だ」

男は長い腕を伸ばしたり、額にかかる黒髪をかき上げたりしながら、不機嫌な顔で呟いた。

男の姿を見て、その声を聴くだけで、昨晩の熱がぶり返す。

きりりと整った太めの眉の下には、甘すぎない二重の切れ長な目元。
瞳は鉄紺色とでも言うのか、青みがかった黒色に輝いている。
ほっそりとした品の良い鼻梁と、その下にたおやかな稜線を描いて続く綺麗な唇。
すこしつんとしたあご。
痩せすぎず、かといって無駄な肉もない滑らかな頬。
形のいい額にはらりと落ちる、ほんのりウエーブのかかった濡羽色の髪。
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