ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
翼は呆気にとられたように、凛のほうに視線を貼り付けたまま頷きもしなかった。


食事を終えると翼は立ち上がった。

「夏美、途中まで送ろう」

夏美はきらりと瞳を輝かせ、すっと立ち上がった。

「ありがとう。ちょっと酔っちゃったから、帰り道不安だなって思ってたところなの。凛、じゃあ帰るね」

「うん。気を付けて帰ってね。今日はご飯、ありがとう」

凛は玄関まで夏美を送り出した。マンションの外廊下を、翼にしなだれかかるように歩く夏美の後ろ姿を見ながら、胸の奥からこみ上げる嫉妬心を押さえ込んだ。
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