ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
翼は夏美から体を離し、冷徹な目で見下ろした。

「凛のものを横から奪い取らない、そう約束しろ」

「約束なんてできない。だって、私、なにも奪ってなんかいないもの」

「そうだ。どうあがいても凛の大切なものを、お前は奪えない。お前は凛のあの、優しい心が欲しいだけなんだ」

言い終えると翼は、よろめく夏美の手を引いてタクシー乗り場に連れて行った。



タクシーに乗せ、ドアを閉める前に言った。

「何があっても、絶対に俺はあんたの恋人にはならない」
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