ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
相手は忌み嫌うべき存在だというのに、肉体と本能がどうしようもなく男に惹きつけられてしまっている。

「あの、私これから仕事に行きますんで・・・そろそろ帰ってもらわないと」

みるみる顔が赤らむのを悟られないように、凛はくるりと背を向けて洗面所に向かおうとした。


男は立ち上がってゆく手を阻み、居丈高に凛を見下ろした。

「帰る場所がどこにあるというんだ。お前のせいでここにいるんだ」
「お前のせいって言われても・・・勝手にあなたが来たんだし」
「俺はキャリアをすべてなげうってお前を助けた。それを勝手に来たとは何事だ」

男の顔を見上げ、はからずもうっとりしてしまう。

───なんて美しい顔なんだろう。
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