ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
あの時はたしかに、死神と夏美を引き合わせるわけにはいかなという一心だった。が、本当にそれだけだったろうか。翼を夏美に譲りたくない、そう思ったのではなかったか。

「あなたのこと、夏美にも、だれにも、渡したくないです」

お酒が舌を滑らかにさせている。凛はあまりに素直な言葉を口に出し、同時に頬を一層赤らめた。

「なんだ?胸が、ぎゅっと苦しい」

翼が胸元を掴んで視線を宙に泳がせた。

「もしかして、きゅんとしました?」

「今の言葉もう一回言って見ろ」
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