ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
翼はダイヤに似た光をはらんだ漆黒の瞳で見上げ、昨晩何度も接吻をくれたその形のいい艶のある唇を、凛の手の甲に押し当てた。

「はい」

凛は震える顎をかすかにうなずかせた。突然のポロポーズに心が付いてこないのに、胸には喜びが湧き出して、あふれ出て、涙になってこぼれ出た。

十三歳で、両親を失った。遠い親戚のもとで育った凛には、家族と呼べる存在がいなかった。

誰よりも自分の味方でいてくれる翼が、自分と家族になりたいと思ってくれている。そのことが、現実とは思えない、怖いくらいの歓喜の波が、凛を襲った。

凛は、ベッドから降りると、指輪をはめた手に右手を添えて、そろりとドレッサーに向かって歩いて行った。

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