ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
引き出しからはがきサイズほどのフォトフレームを取り出して立てると、フレームにはまった薄いガラスに、ダイヤの光を反射させた。凛は、もう今はいない父と母に、指輪を見せていた。

───私、家族ができるよ。

胸の中で凛は囁いた。写真の中で笑っている両親の顔が、一層笑みを広げたような気がした。


翼は、ドレッサーに腰かけて指輪を見つめている凛を、後ろから抱きしめた。凛の目線の先にある、小さなフォトフレームに目をやる。
とたんに翼の呼吸が止まった。驚きに、肌に冷たい汗が滲む。鼓動が激しく脈打った。

───この二人は。

翼は思わず凛から腕を離して後ずさった。
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