ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
けれども凛は、彼との幸せに浸り込んで感覚がマヒするかのように、不安を感じることはなかった。

自分は単純に彼を愛してしまい、彼はたまたま元死神だったということにすぎない、そう考えていた。

どんな人間にも、欠点はある。事実、拓斗は家柄も見た目もよく、仕事もできたが、ギャンブル依存症だった。まっさらにきれいな人間なんて、いないのだ。

翼は、行動力は人並み以上で、一人の人間をここまで助け、希望を与えてくれた。以前何者だったかは関係なかった、凛にとって翼はひとりの人間として魅力的で、何よりも安心感を与えてくれる存在になっていた。

翼が浴衣姿で戻ってきた。黒い髪が濡れて、温かみのある室内の照明を浴びて艶っぽく光っている。

「大浴場に行ってきた」

タオルを頬り投げ、凛に歩み寄り思い切り強く抱き寄せた。
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