ズタズタに傷ついた私に滾る溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
「痛いよう、どうしたの翼さん」
「凛、はなれたくない」
「私も」

翼はじっと凛に向けていた瞳をみるみる涙で曇らせた。下まぶたいっぱいに膨らんだ涙の粒が重みをはらんで落ちて、その顔を見上げていた凛の頬に落ちた。

「なにがあったの」

凛の瞳が不安に揺れる。

「凛と離れたくない」

翼は肩を震わせて泣き始めた。凛はうろたえつつもぴったりと体を押し付け、背中を優しく撫でた。

逞しい男が、このときばかりは脆く儚く凛の目に映った。
得体の知れない不安が、凛の心にも暗い影を落とすのを感じた。
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