夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
「とにかく、明日以降、セネル国から何らかの発表があるだろう。ひとまずはそれ待ちだ」
「……はい」
ギルバートの言い分は分かるものの、すぐに納得なんて出来ないエリスは心を痛め、すっかり落ち込んでいた。
そんな彼女に何か言葉を掛けたいギルバートだったが、彼は人付き合いが苦手な事やどう励ませばいいのか分からず、黙って席を立つとキッチンへ向かう。
「今日は疲れただろう。もう日暮だ。飯を食って早く身体を休めた方がいい。エリス、何か食えない物はあるか?」
「……いえ、特には」
「そうか。有りものだが飯を作るから待っててくれ」
「あ、それじゃあ私も何かお手伝いします!」
座ったままのエリスはギルバートの言葉で立ち上がると、急いでキッチンまで歩いて行く。
「いや、お前は座っていて構わない。姫様は料理なんてした事ないだろう?」
「確かに、した事無いですけど……今の私はもう、姫ではありません。これからは何でも自分でやらなければいけないんです……だから、私にも手伝わせてください……」
王女だったエリスに料理の経験など無く、それを危惧したギルバートは彼女の申し出を断ったのだけど、エリスとしては、自分はもう王族とは関係の無い一般人だと言って経験の為にも手伝いたいと申し出る。
そんなエリスの思いにギルバートは、
「分かった。それじゃあ手伝ってもらおう。まずはこの野菜を洗ってくれ」
小さく溜め息を吐きつつも、エリスに料理の手伝いをさせてみる事にした。
手始めにエリスに手渡したのは人参。
これは皮を剥かなくても食べられるので、洗って適当な大きさに切るくらい簡単だと思い頼んだものの、エリスは人参を片手にすぐ近くに置いてある洗剤を取ろうとする。
「おい、何をするつもりだ?」
「え? あの、人参を洗おうかと」
「野菜に洗剤は必要無い。水でサッと汚れを落とせばいい」
「そうなんですか……すみません」
エリスの頭の中で汚れを落とす=洗剤を使うという思考らしく、ギルバートの言葉をきょとんとした様子で聞いていた。
「ギルバートさん、出来ました」
「それじゃあ次はその包丁で人参を切ってくれ。食べやすい大きさでいいから」
「分かりました」
次に、洗い終えた人参を切ってもらおうと頼むギルバート。
言われた通り包丁を手にしたエリスの手付きは危なっかしいものだった。
「……エリス、そんなに刃先を指に近付けたら危険だ。抑える手はこう、指を中にしまい込む形にした方がいい」
「こう、ですか?」
「そうだ。そうすれば指が切れる事は無いから怖くは無いだろう?」
「はい」
まるで幼い子供に教えているかのような感覚に陥るギルバートだったが、普段人と関わらない彼は誰かに物を教える機会も無いので、どこか新鮮さを感じていた。
そして、一人ならばあっという間に出来上がったであろう料理は二時間近く掛かってようやく完成した頃、初めての経験を沢山出来たエリスの表情はどこか満足そうだった。
「……はい」
ギルバートの言い分は分かるものの、すぐに納得なんて出来ないエリスは心を痛め、すっかり落ち込んでいた。
そんな彼女に何か言葉を掛けたいギルバートだったが、彼は人付き合いが苦手な事やどう励ませばいいのか分からず、黙って席を立つとキッチンへ向かう。
「今日は疲れただろう。もう日暮だ。飯を食って早く身体を休めた方がいい。エリス、何か食えない物はあるか?」
「……いえ、特には」
「そうか。有りものだが飯を作るから待っててくれ」
「あ、それじゃあ私も何かお手伝いします!」
座ったままのエリスはギルバートの言葉で立ち上がると、急いでキッチンまで歩いて行く。
「いや、お前は座っていて構わない。姫様は料理なんてした事ないだろう?」
「確かに、した事無いですけど……今の私はもう、姫ではありません。これからは何でも自分でやらなければいけないんです……だから、私にも手伝わせてください……」
王女だったエリスに料理の経験など無く、それを危惧したギルバートは彼女の申し出を断ったのだけど、エリスとしては、自分はもう王族とは関係の無い一般人だと言って経験の為にも手伝いたいと申し出る。
そんなエリスの思いにギルバートは、
「分かった。それじゃあ手伝ってもらおう。まずはこの野菜を洗ってくれ」
小さく溜め息を吐きつつも、エリスに料理の手伝いをさせてみる事にした。
手始めにエリスに手渡したのは人参。
これは皮を剥かなくても食べられるので、洗って適当な大きさに切るくらい簡単だと思い頼んだものの、エリスは人参を片手にすぐ近くに置いてある洗剤を取ろうとする。
「おい、何をするつもりだ?」
「え? あの、人参を洗おうかと」
「野菜に洗剤は必要無い。水でサッと汚れを落とせばいい」
「そうなんですか……すみません」
エリスの頭の中で汚れを落とす=洗剤を使うという思考らしく、ギルバートの言葉をきょとんとした様子で聞いていた。
「ギルバートさん、出来ました」
「それじゃあ次はその包丁で人参を切ってくれ。食べやすい大きさでいいから」
「分かりました」
次に、洗い終えた人参を切ってもらおうと頼むギルバート。
言われた通り包丁を手にしたエリスの手付きは危なっかしいものだった。
「……エリス、そんなに刃先を指に近付けたら危険だ。抑える手はこう、指を中にしまい込む形にした方がいい」
「こう、ですか?」
「そうだ。そうすれば指が切れる事は無いから怖くは無いだろう?」
「はい」
まるで幼い子供に教えているかのような感覚に陥るギルバートだったが、普段人と関わらない彼は誰かに物を教える機会も無いので、どこか新鮮さを感じていた。
そして、一人ならばあっという間に出来上がったであろう料理は二時間近く掛かってようやく完成した頃、初めての経験を沢山出来たエリスの表情はどこか満足そうだった。