夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
「大丈夫だ、そうならないように、俺が居る。例え俺の命が尽きても、お前の事だけは逃してやるから、心を強く持て、エリス」
「……ギルバートさん……」
ギルバートの言葉に、震えていたエリスの身体は少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「……守ってもらえるのは、凄く心強いです。でも、私のせいでギルバートさんにもしもの事があるのは、嫌です……。ごめんなさい、私、凄く我侭な事、言っていますよね」
「そんな事は無い。分かった、それならば約束しよう。俺もお前も助かる最善の方法を考える。だから、心配するな」
「はい、あの、私も、強くなります。力は無理かもしれないけど、心を強く持ちます、もう、すぐに落ち込んだりしません」
「ああ、お前はそれでいい。よし、そろそろ行くか」
「はい」
エリスに元気が戻った事もあり、日が暮れる前に町まで着きたいギルバートは出発を提案した。
再びリュダの背に乗った二人は先を急ぐ。
そして、何とか日が暮れる前にセネル国へ辿り着いた二人は物々しい雰囲気に包まれた町を前に思わず息を呑んだ。
王都よりも離れた町に滞在する事を選んだギルバートはひとまず宿屋を取る。
「お客さん、三日後の葬儀に参列する為にここへ来たのかい?」
「いや、そういう訳では……。葬儀と言うが、何かあったのか?」
情報を得る為にあえて知らない振りをしたギルバートは宿屋の主人から話を聞く。
「お客さん、知らないのかい。セネル国の王妃様がねぇ、亡くなったんだよ。聞いた時は驚いた。残念だよ。あの方はとても綺麗な方だった。周りは皆、政略結婚だと噂をしていてね、今回の事も、本当は病死じゃなくて殺されたんじゃないかって言われているよ」
「そうだったのか。しかし、そんな噂が立つなんて、何か根拠でもあるのか?」
「お客さんはよそから来たから知らなくても仕方が無いか。シューベルト王子は昔から女癖が悪くてね、結婚をしても愛人を沢山抱えて、毎夜楽しんでいたと専らの噂だったよ。何故結婚したのかって疑問の声もあったくらいにね」
「そうか」
「まあ、そんな訳で今は国全体が喪に服しているから店も閉まっているところが多いんだよ、お客さんも折角来たのにタイミングが悪かったね」
「まあ、こればかりは仕方が無いが、こんな状況下に宿を取れただけでもこちらとしては有り難い。助かるよ」
「葬儀に参列する方が遠方から来る事を見越してね、うちに限らず宿や酒場は休まずやっているんだよ」
「そうか、それでは世話になる」
「うちはあくまでも宿の提供だけになるから、食事は隣の酒場で頼むよ。酒の提供は休みだが、食事は提供しているから」
「分かった」
話を終えて部屋の鍵を受け取ると、エリスの手を引いたギルバートは二階の部屋へ歩いて行く。
部屋に入って鍵を掛けると、ずっと黙っていたエリスが口を開いた。
「……知りませんでした、市民の間で結婚に疑問の声があったなんて」
「まあ、女癖が悪いのは兼てより噂があったからな、そんな男が一人の女と結婚となれば何かあると勘繰る奴もいただろう」
「……それに、私が病死じゃなくて殺された……なんて噂がある事も、びっくりです」
「結婚から怪しまれているなら、驚く事では無い。ただ、そういう噂が広まると余計に厄介だ。シューベルトたちは必ず、お前を探すだろうから」
「……そうですよね」
「そんな顔するな、今のお前の容姿なら問題無い。王妃だった面影は無いからな」
「はい」
「かえってビクついていると怪しまれる。堂々としていれば問題無い。それと、葬儀にはお前の妹や継母も参列する為にこちらへ来るだろうから、次は二人が帰る際同じ船に乗って奴らの動向を探ろう」
「……はい」
「腹は空いたか?」
「いえ、今はまだ……」
「そうか、それなら少し休むといい。一休みしたら酒場で飯を食おう」
「はい、分かりました」
こうして二人はエリスの葬儀が行われる数日間をこの町に滞在する事になった。
「……ギルバートさん……」
ギルバートの言葉に、震えていたエリスの身体は少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「……守ってもらえるのは、凄く心強いです。でも、私のせいでギルバートさんにもしもの事があるのは、嫌です……。ごめんなさい、私、凄く我侭な事、言っていますよね」
「そんな事は無い。分かった、それならば約束しよう。俺もお前も助かる最善の方法を考える。だから、心配するな」
「はい、あの、私も、強くなります。力は無理かもしれないけど、心を強く持ちます、もう、すぐに落ち込んだりしません」
「ああ、お前はそれでいい。よし、そろそろ行くか」
「はい」
エリスに元気が戻った事もあり、日が暮れる前に町まで着きたいギルバートは出発を提案した。
再びリュダの背に乗った二人は先を急ぐ。
そして、何とか日が暮れる前にセネル国へ辿り着いた二人は物々しい雰囲気に包まれた町を前に思わず息を呑んだ。
王都よりも離れた町に滞在する事を選んだギルバートはひとまず宿屋を取る。
「お客さん、三日後の葬儀に参列する為にここへ来たのかい?」
「いや、そういう訳では……。葬儀と言うが、何かあったのか?」
情報を得る為にあえて知らない振りをしたギルバートは宿屋の主人から話を聞く。
「お客さん、知らないのかい。セネル国の王妃様がねぇ、亡くなったんだよ。聞いた時は驚いた。残念だよ。あの方はとても綺麗な方だった。周りは皆、政略結婚だと噂をしていてね、今回の事も、本当は病死じゃなくて殺されたんじゃないかって言われているよ」
「そうだったのか。しかし、そんな噂が立つなんて、何か根拠でもあるのか?」
「お客さんはよそから来たから知らなくても仕方が無いか。シューベルト王子は昔から女癖が悪くてね、結婚をしても愛人を沢山抱えて、毎夜楽しんでいたと専らの噂だったよ。何故結婚したのかって疑問の声もあったくらいにね」
「そうか」
「まあ、そんな訳で今は国全体が喪に服しているから店も閉まっているところが多いんだよ、お客さんも折角来たのにタイミングが悪かったね」
「まあ、こればかりは仕方が無いが、こんな状況下に宿を取れただけでもこちらとしては有り難い。助かるよ」
「葬儀に参列する方が遠方から来る事を見越してね、うちに限らず宿や酒場は休まずやっているんだよ」
「そうか、それでは世話になる」
「うちはあくまでも宿の提供だけになるから、食事は隣の酒場で頼むよ。酒の提供は休みだが、食事は提供しているから」
「分かった」
話を終えて部屋の鍵を受け取ると、エリスの手を引いたギルバートは二階の部屋へ歩いて行く。
部屋に入って鍵を掛けると、ずっと黙っていたエリスが口を開いた。
「……知りませんでした、市民の間で結婚に疑問の声があったなんて」
「まあ、女癖が悪いのは兼てより噂があったからな、そんな男が一人の女と結婚となれば何かあると勘繰る奴もいただろう」
「……それに、私が病死じゃなくて殺された……なんて噂がある事も、びっくりです」
「結婚から怪しまれているなら、驚く事では無い。ただ、そういう噂が広まると余計に厄介だ。シューベルトたちは必ず、お前を探すだろうから」
「……そうですよね」
「そんな顔するな、今のお前の容姿なら問題無い。王妃だった面影は無いからな」
「はい」
「かえってビクついていると怪しまれる。堂々としていれば問題無い。それと、葬儀にはお前の妹や継母も参列する為にこちらへ来るだろうから、次は二人が帰る際同じ船に乗って奴らの動向を探ろう」
「……はい」
「腹は空いたか?」
「いえ、今はまだ……」
「そうか、それなら少し休むといい。一休みしたら酒場で飯を食おう」
「はい、分かりました」
こうして二人はエリスの葬儀が行われる数日間をこの町に滞在する事になった。