夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
そして、葬儀当日。
王都には以前より関わりのある他国の王族たちが続々と姿を見せる。
その中には勿論、エリスの継母アフロディーテや妹のリリナの姿もあった。
喪服に身を包み、エリスの死を悲しむ素振りを見せてはいるものの、腹の奥では未だにエリスを見つけられていない事に焦りの色を浮かべているに違いない。
そんなアフロディーテたちの姿を少し離れたところからギルバートと共に見ていたエリス。
セネル国の葬儀は城の前で執り行われる事になり、市民は城の外から葬儀の様子を見守る形になる。
城の前には沢山の花に囲まれて生前の美しいエリスの写真が飾られ、その下にエリスではない別の誰かの遺体が入った棺桶が置かれていた。
ギルバートたちは棺桶に入っているのが誰なのかを確認する事は出来ないのだけど、以前エリスが心配していた通り、エリスの身代わりとして彼女の身の回りの世話を担っていたメイドが毒殺され、その遺体をエリスに似せる形で化粧を施されて入れられていた。
それを知っているのはシューベルトたちセネル国王家の一部の人間と、アフロディーテやリリナのみ。
他の者は何の疑いも持たず、ただただ病魔に侵され若くして命を落としたエリス王妃の死を悼んでいた。
葬儀が終わり、火葬場まで運ばれる際、市民が祈りを捧げられるように王都から周辺の町を回って行く事に。
馬車で運ばれる棺桶を前に、市民たちは皆エリスの冥福を祈っていく。
その中にはギルバートたちの姿もあり、エリスは複雑な心境の中、自身の身代わりとして殺されたであろうメイドの冥福を静かに祈っていた。
そして、馬車が通り過ぎる際、シューベルトやアフロディーテ、リリナの姿を久々に目の当たりにして思った事は、彼らに対する憎しみの思いだけだった。
「大丈夫か?」
祈りを捧げ終わった市民たちがそれぞれ散っていく中、俯き黙ったままのエリスにギルバートが声を掛けた。
「大丈夫です。初めはその、私の身代わりに殺されてしまったであろうメイドさんには申し訳無いという思いでいっぱいで……どう償えばいいのかと自責の念に苛まれていたのですが、その一方でシューベルトたちに加担していたのだと思うと心の底から彼女に申し訳ないとも思えず……とにかく複雑な心境でした」
「身代わりになった事は可哀想だと思うが、情けをかける必要は無い」
「そうですよね。それに、シューベルトたちを久しぶりに見て、今はもう、怒りと憎しみの感情しか出てきません」
「それでいい。復讐をすると決めたのなら、相手に情けをかけるなど無駄な感情だ。自分の幸せだけを考えろ」
「……はい」
「さてと、ひとまず宿に戻って、少し休んだら港へ向かおう。次は港でルビナ国の女王たちがいつどの船に乗るかを探りに行く。同じ船に乗らなくては意味が無いからな」
「そうですね」
エリスはギルバートに復讐を誓いながらもどこか乗り気になれていなかった。
心優しい彼女だからこそ、復讐なんてすべきでは無いという迷いが心の奥底にあったのだ。
けれど、今日の葬儀を見て、その迷いは消え去った。
悲しむ素振りをしていただけで、心の底から悲しんでいない事が表情ですぐに分かったから。
自分の味方は、ギルバート一人だけ。
彼が居れば、彼さえ居てくれれば大丈夫。
彼を信じていれば、必ず上手くいく。
そう改めて感じられたエリスは迷いを全て捨て去ると、優しく頼れるギルバートと共に必ず自分を陥れた奴らに復讐してやると心に誓いを立てた。
王都には以前より関わりのある他国の王族たちが続々と姿を見せる。
その中には勿論、エリスの継母アフロディーテや妹のリリナの姿もあった。
喪服に身を包み、エリスの死を悲しむ素振りを見せてはいるものの、腹の奥では未だにエリスを見つけられていない事に焦りの色を浮かべているに違いない。
そんなアフロディーテたちの姿を少し離れたところからギルバートと共に見ていたエリス。
セネル国の葬儀は城の前で執り行われる事になり、市民は城の外から葬儀の様子を見守る形になる。
城の前には沢山の花に囲まれて生前の美しいエリスの写真が飾られ、その下にエリスではない別の誰かの遺体が入った棺桶が置かれていた。
ギルバートたちは棺桶に入っているのが誰なのかを確認する事は出来ないのだけど、以前エリスが心配していた通り、エリスの身代わりとして彼女の身の回りの世話を担っていたメイドが毒殺され、その遺体をエリスに似せる形で化粧を施されて入れられていた。
それを知っているのはシューベルトたちセネル国王家の一部の人間と、アフロディーテやリリナのみ。
他の者は何の疑いも持たず、ただただ病魔に侵され若くして命を落としたエリス王妃の死を悼んでいた。
葬儀が終わり、火葬場まで運ばれる際、市民が祈りを捧げられるように王都から周辺の町を回って行く事に。
馬車で運ばれる棺桶を前に、市民たちは皆エリスの冥福を祈っていく。
その中にはギルバートたちの姿もあり、エリスは複雑な心境の中、自身の身代わりとして殺されたであろうメイドの冥福を静かに祈っていた。
そして、馬車が通り過ぎる際、シューベルトやアフロディーテ、リリナの姿を久々に目の当たりにして思った事は、彼らに対する憎しみの思いだけだった。
「大丈夫か?」
祈りを捧げ終わった市民たちがそれぞれ散っていく中、俯き黙ったままのエリスにギルバートが声を掛けた。
「大丈夫です。初めはその、私の身代わりに殺されてしまったであろうメイドさんには申し訳無いという思いでいっぱいで……どう償えばいいのかと自責の念に苛まれていたのですが、その一方でシューベルトたちに加担していたのだと思うと心の底から彼女に申し訳ないとも思えず……とにかく複雑な心境でした」
「身代わりになった事は可哀想だと思うが、情けをかける必要は無い」
「そうですよね。それに、シューベルトたちを久しぶりに見て、今はもう、怒りと憎しみの感情しか出てきません」
「それでいい。復讐をすると決めたのなら、相手に情けをかけるなど無駄な感情だ。自分の幸せだけを考えろ」
「……はい」
「さてと、ひとまず宿に戻って、少し休んだら港へ向かおう。次は港でルビナ国の女王たちがいつどの船に乗るかを探りに行く。同じ船に乗らなくては意味が無いからな」
「そうですね」
エリスはギルバートに復讐を誓いながらもどこか乗り気になれていなかった。
心優しい彼女だからこそ、復讐なんてすべきでは無いという迷いが心の奥底にあったのだ。
けれど、今日の葬儀を見て、その迷いは消え去った。
悲しむ素振りをしていただけで、心の底から悲しんでいない事が表情ですぐに分かったから。
自分の味方は、ギルバート一人だけ。
彼が居れば、彼さえ居てくれれば大丈夫。
彼を信じていれば、必ず上手くいく。
そう改めて感じられたエリスは迷いを全て捨て去ると、優しく頼れるギルバートと共に必ず自分を陥れた奴らに復讐してやると心に誓いを立てた。