夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
そんな事をして気付かれでもしたら大変な事になると不安に思いながらも、ギルバートの強さならばどうにかなりそうな気もするエリス。
ふと、一つの疑問が頭に浮かぶ。
「あの、私はどのようにして船に乗り込めばいいのでしょう?」
それは自分がどのようにして船内に乗り込むのかという事。
まさかギルバートと同様見張り兵に成り代わる訳にはいかず、それならば他にどんな手段があるのか気になっていると、
「お前には少し不便を掛けるが、暫く積み荷の中に身を潜めていて欲しい」
言いながらすぐ側に置いてある大きな酒樽を指差した。
「え? 私、この中に入るんですか?」
「ああ、お前の背丈ならば少々窮屈かもしれないがいけるだろう。大丈夫、必ず成功するから、俺を信じてくれ」
ギルバートの言葉に驚くも、恐らくそれ以外に手段は無さそうなのでエリスは小さく頷いた。
「分かりました。あの、ギルバートさんもくれぐれも気を付けてくださいね」
「ああ、分かっている」
そう言葉を交わした後、エリスは酒樽の中へ身を潜めた。
中は窮屈ではあるものの、比較的小柄で細身のエリス一人ならばそこまで窮屈では無く、樽には多少の隙間もあるので外の様子も覗く事が出来る。
そして、その樽をギルバートは他の見張りが戻って来ないうちに船内へと運んでいくと、自分から見える安全な場所に置いて何食わぬ顔で再び持ち場に戻った。
それから数時間後、予定より少し早めに出航する事になる。
しかも、アフロディーテやリリナの他にシューベルトの姿も船にはあった。
何が目的なのか、シューベルトはアフロディーテたちと共にルビナ国へ向かうらしい。
出航してから暫く、見張り兵たちの動きに気を付けながらエリスを酒樽から外へ出すと、積み荷の一番奥に身を隠すよう指示をする。
「ここは港に着くまで誰も近寄らないから安心しろ。俺はこれからルビナの女王に近付いて情報を得る」
「近付いてなんて、気付かれたりしませんか?」
「問題無い。向こうは俺の事など知らないからな。あくまでも見張り兵の一人に過ぎない」
「ですが……」
「大丈夫だ、お前こそ、見つからないよう気を付けてくれ。本当ならずっと樽の中に居る方が安全なんだが、流石に一日過ごすのは無理だろう」
「はい……分かっています。ギルバートさんも、お気を付けて」
いつまでもこの場で話をしていられない事もあり、後ろ髪引かれる思いでギルバートを送り出したエリスは積み荷の奥の狭いスペースに身を隠すように座り込んだ。
ギルバートはというと、アフロディーテたちが甲板に出ている事を聞きつけすぐ近くまでやって来ると、出来る限り側を陣取り、彼女たちの口元に注視する。
離れている場所からでも相手の話す内容を読み取れるよう、読唇術を身に付けているギルバート。
アフロディーテも周りに人が居るか否かは警戒しているもののまさか唇の動きを読まれているとは夢にも思わず、リリナやシューベルトたちと共に会話を続けていく。
初めは大した内容では無く世間話にも似たどうでもいい話だったのだが、暫くすると突如エリスの話題が上がってきた。
ふと、一つの疑問が頭に浮かぶ。
「あの、私はどのようにして船に乗り込めばいいのでしょう?」
それは自分がどのようにして船内に乗り込むのかという事。
まさかギルバートと同様見張り兵に成り代わる訳にはいかず、それならば他にどんな手段があるのか気になっていると、
「お前には少し不便を掛けるが、暫く積み荷の中に身を潜めていて欲しい」
言いながらすぐ側に置いてある大きな酒樽を指差した。
「え? 私、この中に入るんですか?」
「ああ、お前の背丈ならば少々窮屈かもしれないがいけるだろう。大丈夫、必ず成功するから、俺を信じてくれ」
ギルバートの言葉に驚くも、恐らくそれ以外に手段は無さそうなのでエリスは小さく頷いた。
「分かりました。あの、ギルバートさんもくれぐれも気を付けてくださいね」
「ああ、分かっている」
そう言葉を交わした後、エリスは酒樽の中へ身を潜めた。
中は窮屈ではあるものの、比較的小柄で細身のエリス一人ならばそこまで窮屈では無く、樽には多少の隙間もあるので外の様子も覗く事が出来る。
そして、その樽をギルバートは他の見張りが戻って来ないうちに船内へと運んでいくと、自分から見える安全な場所に置いて何食わぬ顔で再び持ち場に戻った。
それから数時間後、予定より少し早めに出航する事になる。
しかも、アフロディーテやリリナの他にシューベルトの姿も船にはあった。
何が目的なのか、シューベルトはアフロディーテたちと共にルビナ国へ向かうらしい。
出航してから暫く、見張り兵たちの動きに気を付けながらエリスを酒樽から外へ出すと、積み荷の一番奥に身を隠すよう指示をする。
「ここは港に着くまで誰も近寄らないから安心しろ。俺はこれからルビナの女王に近付いて情報を得る」
「近付いてなんて、気付かれたりしませんか?」
「問題無い。向こうは俺の事など知らないからな。あくまでも見張り兵の一人に過ぎない」
「ですが……」
「大丈夫だ、お前こそ、見つからないよう気を付けてくれ。本当ならずっと樽の中に居る方が安全なんだが、流石に一日過ごすのは無理だろう」
「はい……分かっています。ギルバートさんも、お気を付けて」
いつまでもこの場で話をしていられない事もあり、後ろ髪引かれる思いでギルバートを送り出したエリスは積み荷の奥の狭いスペースに身を隠すように座り込んだ。
ギルバートはというと、アフロディーテたちが甲板に出ている事を聞きつけすぐ近くまでやって来ると、出来る限り側を陣取り、彼女たちの口元に注視する。
離れている場所からでも相手の話す内容を読み取れるよう、読唇術を身に付けているギルバート。
アフロディーテも周りに人が居るか否かは警戒しているもののまさか唇の動きを読まれているとは夢にも思わず、リリナやシューベルトたちと共に会話を続けていく。
初めは大した内容では無く世間話にも似たどうでもいい話だったのだが、暫くすると突如エリスの話題が上がってきた。