夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
「それにしても、あの子、一体何処へ逃げ隠れしてるのかしら。手負いのはずよね?」
「格好からしても遠くには行けないはずでしょ?」
「そのはずなんだけど……森の中をくまなく探したけど見つからなかったらしい」
「協力者がいるとしか思えないけど……セネルにあの子の味方なんて居ないはずよね?」
「ああ。城の者は皆、俺の配下に置いてるからアイツに付くはずが無い」
「それじゃあ、野犬にでも襲われて……」
「それにしたって遺体の一部くらいは見つかるはずでしょ? 何も無いなんておかしいわ」
ギルバートは彼女たちの口の動きを読みながら会話の内容を知れば知る程、怒りが込み上げてくる。
「本当、何処にいるのかしら」
「万が一生きている事が知られたら、困るわよね」
「ああ。それだけは避けないと」
「どこまで疫病神なのかしら、あの子は」
「やっぱり確実に殺せるよう、毒殺したら良かったのよ」
「そうね、あの子馬鹿だから毒を盛られても気付かなかったわよね」
「元はと言えば、あの殺し屋が無能なのが悪いのよ。女一人殺れないなんて」
「そうだな、それについてはこちらの人選ミスだった」
エリスの遺体が見つからない事に焦っているのは予想していたが、ここまで彼女を邪魔に思っている事には言葉も出ない。
(……一体、エリスに何の恨みがあってここまで憎むんだ?)
エリスは温厚で優しい性格の持ち主で、とても恨まれる人物とは到底思えない。
それは彼女と関わった事のある人間ならば誰もが分かる。
しかし、ギルバートもまた壮絶な人生を歩んできた一人。
理不尽に恨まれたり憎まれたりという事は身を持って体験しているので、理由はどうあれ恨みを持たれて命を狙われるのも仕方の無い事だと気持ちを切り替え、湧き上がっていた怒りを鎮めていく。
暫く三人で会話をしていたもののリリナがエリスの話題に飽きてきたのか、部屋へ戻ると一人船内へ向かって行く。
残されたアフロディーテとシューベルトは再び会話を再開させたのだけど、二人の会話から更にとんでもない事実を知る事になる。
そして、その事実を知ったギルバートは、より一層エリスを守らなければという思いを強くした。
もっと探りを入れたかったギルバートだったが、見張り兵として別の仕事を頼まれてしまった為、新たな持ち場へ就く事へ。
そして、日が落ちて辺りも暗くなり始めた頃、自身の為に配給された食料を持ってエリスの元へ向かって行った。
「なかなか顔を出せなくて悪かった。変わった事は無かったか?」
「ギルバートさん……。はい、大丈夫でした」
狭く暗い空間に一人残されていたエリスは心に不安な気持ちを抱えていたものの、ギルバートが顔を見せてくれた事でその不安は一気に吹き飛び笑顔になる。
「お仕事の方、大丈夫なんですか?」
「ああ、交代で休憩を取る事になっているから問題無い」
「そうですか。それで……何か、分かりましたか?」
エリスのその質問にギルバートはどう答えるべきか一瞬言葉を詰まらせる。
全てを包み隠さずに話してしまう方がいいのかもしれないが、この後また彼女の傍を離れなくてはならない事を考えると、それは今では無いような気がしたギルバートは、
「いや、流石に奴らも警戒しているのか、大した話をしてはいなかったから特に収穫は無かった」
大した情報が得られなかったと嘘を吐いた。
「格好からしても遠くには行けないはずでしょ?」
「そのはずなんだけど……森の中をくまなく探したけど見つからなかったらしい」
「協力者がいるとしか思えないけど……セネルにあの子の味方なんて居ないはずよね?」
「ああ。城の者は皆、俺の配下に置いてるからアイツに付くはずが無い」
「それじゃあ、野犬にでも襲われて……」
「それにしたって遺体の一部くらいは見つかるはずでしょ? 何も無いなんておかしいわ」
ギルバートは彼女たちの口の動きを読みながら会話の内容を知れば知る程、怒りが込み上げてくる。
「本当、何処にいるのかしら」
「万が一生きている事が知られたら、困るわよね」
「ああ。それだけは避けないと」
「どこまで疫病神なのかしら、あの子は」
「やっぱり確実に殺せるよう、毒殺したら良かったのよ」
「そうね、あの子馬鹿だから毒を盛られても気付かなかったわよね」
「元はと言えば、あの殺し屋が無能なのが悪いのよ。女一人殺れないなんて」
「そうだな、それについてはこちらの人選ミスだった」
エリスの遺体が見つからない事に焦っているのは予想していたが、ここまで彼女を邪魔に思っている事には言葉も出ない。
(……一体、エリスに何の恨みがあってここまで憎むんだ?)
エリスは温厚で優しい性格の持ち主で、とても恨まれる人物とは到底思えない。
それは彼女と関わった事のある人間ならば誰もが分かる。
しかし、ギルバートもまた壮絶な人生を歩んできた一人。
理不尽に恨まれたり憎まれたりという事は身を持って体験しているので、理由はどうあれ恨みを持たれて命を狙われるのも仕方の無い事だと気持ちを切り替え、湧き上がっていた怒りを鎮めていく。
暫く三人で会話をしていたもののリリナがエリスの話題に飽きてきたのか、部屋へ戻ると一人船内へ向かって行く。
残されたアフロディーテとシューベルトは再び会話を再開させたのだけど、二人の会話から更にとんでもない事実を知る事になる。
そして、その事実を知ったギルバートは、より一層エリスを守らなければという思いを強くした。
もっと探りを入れたかったギルバートだったが、見張り兵として別の仕事を頼まれてしまった為、新たな持ち場へ就く事へ。
そして、日が落ちて辺りも暗くなり始めた頃、自身の為に配給された食料を持ってエリスの元へ向かって行った。
「なかなか顔を出せなくて悪かった。変わった事は無かったか?」
「ギルバートさん……。はい、大丈夫でした」
狭く暗い空間に一人残されていたエリスは心に不安な気持ちを抱えていたものの、ギルバートが顔を見せてくれた事でその不安は一気に吹き飛び笑顔になる。
「お仕事の方、大丈夫なんですか?」
「ああ、交代で休憩を取る事になっているから問題無い」
「そうですか。それで……何か、分かりましたか?」
エリスのその質問にギルバートはどう答えるべきか一瞬言葉を詰まらせる。
全てを包み隠さずに話してしまう方がいいのかもしれないが、この後また彼女の傍を離れなくてはならない事を考えると、それは今では無いような気がしたギルバートは、
「いや、流石に奴らも警戒しているのか、大した話をしてはいなかったから特に収穫は無かった」
大した情報が得られなかったと嘘を吐いた。