夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
エリスと共に食事をとったギルバートは再び持ち場へ就く。
深夜、任された仕事を終えて甲板に出て来たギルバートは、暗闇に紛れて誰かと密会しているシューベルトの姿を捉えた。
気付かれないよう距離を取り、相手が誰なのかを確認すると、ちょうど翳っていた月が顔を見せた事で光が差し、相手の顔が映し出された。
そこに居たのはシューベルトの側近の男。
恐らくエリス捜索についての指示でもしているのだろう。
会話の全てを聞き取る事は出来なかったもののシューベルトたちはエリス捜索の範囲を更に広げようとしている事を悟り、早めに新たな対策と復讐へ向けての行動を起こさなければと決意を固めた。
翌日、ルビナ国へ着いた舟から上手く降りる事が出来たギルバートとエリスは、再び情報収集を始める事にした。
エリスは嫁いでから久々に故郷へ戻って来た事もあって、懐かしさを感じているのか行きたい場所があると遠慮がちに口にした。
「行きたい場所?」
「その……お父様とお母様が眠るお墓へ、行きたいんですけど……無理でしょうか?」
エリスのその言葉に、ギルバートは胸が締め付けられそうになった。
彼女は嫁いでからというもの軟禁状態だった事もあって、故郷へ戻る事すら出来なかった。
それが今、久しぶりに故郷の地を踏み、大好きだった両親と過ごした日々を思い出したのだろう。
大切な人に会いに行きたいと思う事は当然なのだ。
ただ、国によって王族の墓ともなれば簡単に立ち入る事が出来なかったり警備が厳重だったりする事もある。
ルビナ国がどうなのか分かりかねるギルバートは多少懸念しつつも、エリスの願いを叶えてやりたいと思い彼女の意思を尊重した。
「そうだな、きっとお前の両親もお前が顔を見せれば喜ぶだろう。どこにあるんだ?」
「王都からは少し離れているので、馬車で向かわなければならないんですけど……」
「分かった。では御者を探そう」
「はい」
エリスの希望で彼女の両親が眠る墓地へと向かう為、市場へ行って供える花束を購入してから御者を見つけた二人は馬車に揺られていく。
三十分程経って辿り着き、馬車を降りた二人はひたすら丘を登っていく。
そして、登りきった先には綺麗な景色が広がり、可愛らしい小さな花が沢山咲いている中に、豪華な墓石があった。
ここはエリスの母親が大好きだった場所で、彼女が亡くなった際、大好きな妻が愛したこの場所に墓を建ててやりたいという思いからエリスの父親が建てた墓。
そして、父親もまた、死ぬ間際、妻と同じ墓に入りたいと希望した事で、二人は同じ墓に眠っていた。
「お母様が亡くなった時、先祖が眠る代々のお墓があるのにわざわざ別の場所に建てるだなんてと周りからは色々言われていたのですが、お父様はどうしても、お母様が好きだったこの場所にと譲らなくて、周りが折れる形で、ここにお墓を建てたんです。お父様が亡くなった時も、本人がここへ入る事を希望していたのですが、だいぶ揉めたんです。継母は代々の墓へ入れるべきと言って聞かなかったのですが、私はお父様の意志を尊重したくて、どうにか説得して、ここに入れてあげる事が出来たんです。ですから、ここに来る人は限られているんです。前妻が眠るこのお墓に継母は近寄りたくないようなので、命日くらいしか来ないと思いますし……」
「そうか……しかしここは、本当に良いところだな」
「はい、そうなんです。私も幼い頃、よくお父様とお母様の三人でここを訪れるのが大好きで、ここへ来ると、すごく落ち着くのです」
ギルバートはエリスと出逢ってからというもの、彼女の笑顔を見る事はあったものの、それはどこかぎこちないものばかり。
けれど、今目の前に居るエリスの笑顔は心の底から喜びで溢れ、とても幸せそうな笑顔だったので彼女を見守る彼もまた自然と口元が緩んでいた。
深夜、任された仕事を終えて甲板に出て来たギルバートは、暗闇に紛れて誰かと密会しているシューベルトの姿を捉えた。
気付かれないよう距離を取り、相手が誰なのかを確認すると、ちょうど翳っていた月が顔を見せた事で光が差し、相手の顔が映し出された。
そこに居たのはシューベルトの側近の男。
恐らくエリス捜索についての指示でもしているのだろう。
会話の全てを聞き取る事は出来なかったもののシューベルトたちはエリス捜索の範囲を更に広げようとしている事を悟り、早めに新たな対策と復讐へ向けての行動を起こさなければと決意を固めた。
翌日、ルビナ国へ着いた舟から上手く降りる事が出来たギルバートとエリスは、再び情報収集を始める事にした。
エリスは嫁いでから久々に故郷へ戻って来た事もあって、懐かしさを感じているのか行きたい場所があると遠慮がちに口にした。
「行きたい場所?」
「その……お父様とお母様が眠るお墓へ、行きたいんですけど……無理でしょうか?」
エリスのその言葉に、ギルバートは胸が締め付けられそうになった。
彼女は嫁いでからというもの軟禁状態だった事もあって、故郷へ戻る事すら出来なかった。
それが今、久しぶりに故郷の地を踏み、大好きだった両親と過ごした日々を思い出したのだろう。
大切な人に会いに行きたいと思う事は当然なのだ。
ただ、国によって王族の墓ともなれば簡単に立ち入る事が出来なかったり警備が厳重だったりする事もある。
ルビナ国がどうなのか分かりかねるギルバートは多少懸念しつつも、エリスの願いを叶えてやりたいと思い彼女の意思を尊重した。
「そうだな、きっとお前の両親もお前が顔を見せれば喜ぶだろう。どこにあるんだ?」
「王都からは少し離れているので、馬車で向かわなければならないんですけど……」
「分かった。では御者を探そう」
「はい」
エリスの希望で彼女の両親が眠る墓地へと向かう為、市場へ行って供える花束を購入してから御者を見つけた二人は馬車に揺られていく。
三十分程経って辿り着き、馬車を降りた二人はひたすら丘を登っていく。
そして、登りきった先には綺麗な景色が広がり、可愛らしい小さな花が沢山咲いている中に、豪華な墓石があった。
ここはエリスの母親が大好きだった場所で、彼女が亡くなった際、大好きな妻が愛したこの場所に墓を建ててやりたいという思いからエリスの父親が建てた墓。
そして、父親もまた、死ぬ間際、妻と同じ墓に入りたいと希望した事で、二人は同じ墓に眠っていた。
「お母様が亡くなった時、先祖が眠る代々のお墓があるのにわざわざ別の場所に建てるだなんてと周りからは色々言われていたのですが、お父様はどうしても、お母様が好きだったこの場所にと譲らなくて、周りが折れる形で、ここにお墓を建てたんです。お父様が亡くなった時も、本人がここへ入る事を希望していたのですが、だいぶ揉めたんです。継母は代々の墓へ入れるべきと言って聞かなかったのですが、私はお父様の意志を尊重したくて、どうにか説得して、ここに入れてあげる事が出来たんです。ですから、ここに来る人は限られているんです。前妻が眠るこのお墓に継母は近寄りたくないようなので、命日くらいしか来ないと思いますし……」
「そうか……しかしここは、本当に良いところだな」
「はい、そうなんです。私も幼い頃、よくお父様とお母様の三人でここを訪れるのが大好きで、ここへ来ると、すごく落ち着くのです」
ギルバートはエリスと出逢ってからというもの、彼女の笑顔を見る事はあったものの、それはどこかぎこちないものばかり。
けれど、今目の前に居るエリスの笑顔は心の底から喜びで溢れ、とても幸せそうな笑顔だったので彼女を見守る彼もまた自然と口元が緩んでいた。