夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
そんなエリスを前にすると、昨日船で仕入れた情報を彼女に話すのを躊躇ってしまうギルバート。
シューベルトとアフロディーテが話した衝撃的な内容を、エリスにいつ告げるべきか、それとも、自身の胸に留めておくべきか、未だに決め兼ねていた。
暫く墓石の前で過ごした二人は丘を下り、来た時に乗せて貰った御者に二時間程したら迎えに来るよう頼んでおいた事もあって、既に馬車が待機していた。
馬車に乗って市場へ戻る間、二人は御者からある話を聞く事が出来た。
「お客さん、知ってるかい?」
「何だ?」
「近々、ルビナの第二王女のリリナ様とセネル国のシューベルト様がご結婚されるという話を」
「シューベルト、王子と……リリナ……姫が?」
話を聞いた瞬間、驚きを隠せなかったエリスは思わず大きな声で二人の名を口にしては、御者に問い返す。
「ああ、我々も驚いたよ。つい先日エリス様が亡くなったという報せを受けたばかりで、葬儀も終わってまだ間もないのにと」
「……それは、確かな情報なのか?」
「ああ、俺は仲間から聞いただけで、まだ公にはなっていないが、近日中に発表があるだろうな」
「……そうか」
今はまだ、あくまでも噂という状況らしいのだけど、その情報は信頼出来るところからのものらしく、近日中に何かしらの発表があると御者は断言した。
リリナとシューベルトが実は仲が良かった事はエリスも分かっているから二人が一緒になる事に驚きは無いものの、一番驚きを隠せないのはその時期だ。
事情を知らない者や一般市民たちからすれば、前妻であるエリスが亡くなったばかりで悲しみも癒えていない中、あろう事かエリスの妹であるリリナと一緒になるという選択をするだなんて、普通では有り得ないと思うはずだ。
それにも関わらず、二人が一緒になるという情報が流れるという事は裏で話が進んでいるという事なのだ。
しかし、そうなるとルビナ国の後継ぎがいなくなってしまう。
アフロディーテは一体何を考えているのか、エリスにはそれが分からなかった。
市場へ戻り、再びセネル国へ戻る為、夜に出航する船に乗り込んだ二人は、充てがわれた船室へ入る。
そこは二段ベッドと小さなテーブルに二人がけのソファーがあるだけのこじんまりとした個室だったのだが、身体を休めるには十分な空間だった。
「エリス、疲れたろう? 少し休むといい」
口数が少なくなったエリスを心配したギルバートはそう声を掛けるも、彼女は立ち尽くしたまま、何も反応を示さない。
「エリス」
そんな彼女にギルバートが再度声を掛けると、
「ギルバートさん、私、もう少しルビナ国へ残りたいです」
泣きそうな表情を浮かべたエリスがまだルビナ国へ残りたいと訴えかけた。
「何を言うんだ?」
「突拍子も無い事言ってるって分かってます。けど、私、このルビナ国がどうなってしまうのかが心配で!」
恐らく、先程のシューベルトとリリナの話を聞いて不安が募っているのだとギルバートは分かっていた。
しかし、仮にエリスがこの国へ残ったところで、アフロディーテたちと接触出来る訳じゃ無いのだから、国の行く末を知る事など出来るはずが無い。
「お前の気持ちは分からないでも無いが、ここに残ったところでどこで情報を得る? それ以前にお前は捜索されている身なんだ。迂闊に城へ近付ける訳が無いだろう? 一旦落ち着くんだ」
何とか諦めさせようと説得を試みるギルバートだが、それでもエリスは納得がいかないのか、首を縦には振らない。
そんな彼女を前にしたギルバートは溜め息を一つ吐くと、
「お前に、話しておきたい事がある――」
話すべきか否か迷っていた、ある重要な話を、エリスに伝える覚悟を決めてそう切り出した。
シューベルトとアフロディーテが話した衝撃的な内容を、エリスにいつ告げるべきか、それとも、自身の胸に留めておくべきか、未だに決め兼ねていた。
暫く墓石の前で過ごした二人は丘を下り、来た時に乗せて貰った御者に二時間程したら迎えに来るよう頼んでおいた事もあって、既に馬車が待機していた。
馬車に乗って市場へ戻る間、二人は御者からある話を聞く事が出来た。
「お客さん、知ってるかい?」
「何だ?」
「近々、ルビナの第二王女のリリナ様とセネル国のシューベルト様がご結婚されるという話を」
「シューベルト、王子と……リリナ……姫が?」
話を聞いた瞬間、驚きを隠せなかったエリスは思わず大きな声で二人の名を口にしては、御者に問い返す。
「ああ、我々も驚いたよ。つい先日エリス様が亡くなったという報せを受けたばかりで、葬儀も終わってまだ間もないのにと」
「……それは、確かな情報なのか?」
「ああ、俺は仲間から聞いただけで、まだ公にはなっていないが、近日中に発表があるだろうな」
「……そうか」
今はまだ、あくまでも噂という状況らしいのだけど、その情報は信頼出来るところからのものらしく、近日中に何かしらの発表があると御者は断言した。
リリナとシューベルトが実は仲が良かった事はエリスも分かっているから二人が一緒になる事に驚きは無いものの、一番驚きを隠せないのはその時期だ。
事情を知らない者や一般市民たちからすれば、前妻であるエリスが亡くなったばかりで悲しみも癒えていない中、あろう事かエリスの妹であるリリナと一緒になるという選択をするだなんて、普通では有り得ないと思うはずだ。
それにも関わらず、二人が一緒になるという情報が流れるという事は裏で話が進んでいるという事なのだ。
しかし、そうなるとルビナ国の後継ぎがいなくなってしまう。
アフロディーテは一体何を考えているのか、エリスにはそれが分からなかった。
市場へ戻り、再びセネル国へ戻る為、夜に出航する船に乗り込んだ二人は、充てがわれた船室へ入る。
そこは二段ベッドと小さなテーブルに二人がけのソファーがあるだけのこじんまりとした個室だったのだが、身体を休めるには十分な空間だった。
「エリス、疲れたろう? 少し休むといい」
口数が少なくなったエリスを心配したギルバートはそう声を掛けるも、彼女は立ち尽くしたまま、何も反応を示さない。
「エリス」
そんな彼女にギルバートが再度声を掛けると、
「ギルバートさん、私、もう少しルビナ国へ残りたいです」
泣きそうな表情を浮かべたエリスがまだルビナ国へ残りたいと訴えかけた。
「何を言うんだ?」
「突拍子も無い事言ってるって分かってます。けど、私、このルビナ国がどうなってしまうのかが心配で!」
恐らく、先程のシューベルトとリリナの話を聞いて不安が募っているのだとギルバートは分かっていた。
しかし、仮にエリスがこの国へ残ったところで、アフロディーテたちと接触出来る訳じゃ無いのだから、国の行く末を知る事など出来るはずが無い。
「お前の気持ちは分からないでも無いが、ここに残ったところでどこで情報を得る? それ以前にお前は捜索されている身なんだ。迂闊に城へ近付ける訳が無いだろう? 一旦落ち着くんだ」
何とか諦めさせようと説得を試みるギルバートだが、それでもエリスは納得がいかないのか、首を縦には振らない。
そんな彼女を前にしたギルバートは溜め息を一つ吐くと、
「お前に、話しておきたい事がある――」
話すべきか否か迷っていた、ある重要な話を、エリスに伝える覚悟を決めてそう切り出した。