夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
「話しておきたい、事?」
「ああ。まずはそこに座ってくれ」
「……分かり、ました」

 話があると深刻そうな表情で言われたエリスはただならぬ予感を感じつつもベッドに腰掛けると、ギルバートはエリスの正面に椅子を持って来て座り、こう前置きをした。

「――これから話す事は、昨日、シューベルトとアフロディーテの二人の会話から読み取ったもので、全てを知る事は出来なかったんだが、そこから俺の憶測した部分もある。恐らくお前にとっては辛い内容になるかもしれないが、聞いて欲しい」

 そんな風に言われたエリスは戸惑いの色を浮かべたものの、小さな深呼吸をしてから真っ直ぐギルバートを見据え、

「分かりました、話してください。どんな内容でも、最後まで聞きます」

 覚悟を決めて、ギルバートの話を聞く事にした。

「――まず初めに、お前の父親についてだ」
「お父様の?」
「ああ。お前の父――ルビナ国王は流行り病で亡くなったのでは無い」
「……え?」
「……国王は、殺されたんだ。後妻であるアフロディーテと、その恋人関係にある宰相のエルロットによってな」

 ギルバートの話は開始から衝撃的なものだった。

 まさか、父親であるタリムの死が病では無く、彼を愛していると思っていたアフロディーテの手によって行われたものだったという事に。

「……そんな……っ、どうして……っ」

 父親の死の真相を知ったエリスは深く動揺し、怒りと悲しみから身体が震えだしていた。

「エリス、お前の気持ちは分かるが、今は落ち着いてくれ。悪いな、本当は迷ったんだ。この話を聞いた時、お前に話すかどうか。話せば苦しめる事になると分かっていたけれど、やはり知る権利があると思ったから話したんだ」
「……っ」

 向かいに座っていたギルバートはエリスの隣に座り直すと、彼女の身体を抱き締めながら落ち着かせるように言い聞かせた。

「……理由については分からないが、俺の憶測としては、元々アフロディーテはエルロットによって後妻になるよう仕組まれたのでは無いかと思っている。お前の母が亡くなったのは流行り病で間違い無いとは思うが、それをきっかけにエルロットは自分と繋がりのある女を王族に引き入れる事で、自分の地位を何とか出来ると考えたのでは無いだろうか」
「…………っ」

 エルロットはタリムが一番の信頼を置いていて、とにかく優秀な人材だった。

 それは城の者なら誰でも分かっていて、エリス自身もそう思っていた。

 タリムが存命の頃は優しかったエルロットも、亡くなった途端に人が変わったかのように冷たくなり、アフロディーテの忠実な下僕のように尽くしていたのも、今となっては二人が元から親密な関係だったからだという事なのだろう。

 自分たちの私利私欲の為に国王である父親が殺されただけでは無く、居場所までも奪われ、更には利益の為に嫁がされた挙句にそれすらも裏があった事を知ったエリスはもはや言葉にならず、込み上げる怒りを抑えるのに必死だった。
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