夫と妹に裏切られて全てを失った私は、辺境地に住む優しい彼に出逢い、沢山の愛を貰いながら居場所を取り戻す
「よし、これでいいだろう。水に濡らさないよう、気をつけるんだ。食事の支度は俺がやるから、エリスは座っていろ」
手当てを終えたギルバートは椅子から立ち上がると、エリスがやりかけだった野菜切りを再開する。
一方のエリスはというと、その場から動く事もせず、手当てされて包帯が巻かれた指を無言で眺めている。
そんなエリスを気に掛けつつも、今は何も言わない方がいいだろうとギルバートもまた、無言で食事の支度を続けていた。
それから暫くして、野菜スープと洋風のパスタが出来上がる。
食卓に並べられていく料理を前にしたエリスは、「美味しそう……」と小さな声で呟いた。
それを耳にしたギルバートの口元は微かに緩み、「エリス、食べ終わったら少し散歩に出掛けよう」と言いながら、エリスと向かい合わせに座る。
「……あの、用意してもらって、すみませんでした。」
「構わない。気にするな。それよりも早く食うぞ」
「はい。いただきます」
こうして二人は食事を始め、徐々にエリスの表情が和らいでいくのをギルバートはホッとした様子で眺めていた。
食事を終えて片付けを済ませたギルバートは、リュダの元に居たエリスに声を掛ける。
「片付け終わったし、そろそろ出掛けるか」
「はい」
食事中は時折笑顔を見せていたエリスだが、やはり一人になると色々考えてしまうのか、またしても表情が暗く元気も無い。
そんな彼女を元気づけたいギルバートはどうすればいいのかを考えるも、良い案が思い浮かばずこちらはこちらで悩んでいた。
とにかく今は気晴らしに散歩に出掛けるのが一番だろうと、二人はリュダを連れて自宅を出発した。
暫く宛もなく歩きながら移動していたものの、ふとギルバートはある場所にエリスを連れて行こうと思いたつ。
「エリス、行きたいところがあるからリュダに乗って移動しよう」
「……はい」
もう何度かリュダの上に乗っている事もあり、乗り降りがスムーズになったエリスはギルバートの言葉に頷くと、彼の手を借りてリュダの上に跨り、間髪いれずにエリスの後ろに座ったギルバートは手綱を握って何処かへ向かってリュダを走らせ始めた。
「あの、何か、お買い物ですか?」
「いや、そういう訳じゃない。お前に見せてやりたい場所があるんだ。エリスなら、きっと気に入ると思う」
それだけ答えたギルバートはそのまま前を見てひたすらリュダを走らせていくので、これは着いてからのお楽しみという事なのだろうと悟ったエリスはそれ以上聞く事をしなかった。
それから数十分、木々に覆われた森を抜けた先には綺麗な花が咲き誇る野原が現れた。
「綺麗ですね」
「なかなかの景色だろう?」
「はい! ここが、私に見せたかった場所ですか?」
「ああ。 お前が教えてくれた丘に比べると大した事は無いかもしれないが、ここも人があまり来ない、落ち着ける場所だ。心を休めるにはいいところだと思ってな」
言いながらリュダを止めたギルバートは先に降りると、エリスに手を差し伸べて降りるよう促した。
そしエリスはリュダから降りると、辺りを見回しながら普段あまり見かけない種類の花が咲いているのを見つけて興味津々で鑑賞する。
そんなエリスを眺めたギルバートはここへ連れてきた事を良かったと喜び、リュダに持ってきた水を飲ませてからしゃがんで休むようにとの意味を込めて身体を撫でてやる。
撫でられたリュダは意図を理解してその場にしゃがんで眠る体勢を取ったので、そんなリュダに寄りかかる形でギルバートも腰を下ろした。
「夕方まで好きに過ごすといい。花を摘んでも構わないし、シートとブランケットを持ってきているから、眠くなったら横になっていてもいい」
声を掛けられたエリスは少し悩むような素振りを見せながらもリュダに寄りかかるギルバートの隣にやって来ると、
「あの、私もここに座っていいでしょうか?」
そう遠慮がちに尋ねた。
手当てを終えたギルバートは椅子から立ち上がると、エリスがやりかけだった野菜切りを再開する。
一方のエリスはというと、その場から動く事もせず、手当てされて包帯が巻かれた指を無言で眺めている。
そんなエリスを気に掛けつつも、今は何も言わない方がいいだろうとギルバートもまた、無言で食事の支度を続けていた。
それから暫くして、野菜スープと洋風のパスタが出来上がる。
食卓に並べられていく料理を前にしたエリスは、「美味しそう……」と小さな声で呟いた。
それを耳にしたギルバートの口元は微かに緩み、「エリス、食べ終わったら少し散歩に出掛けよう」と言いながら、エリスと向かい合わせに座る。
「……あの、用意してもらって、すみませんでした。」
「構わない。気にするな。それよりも早く食うぞ」
「はい。いただきます」
こうして二人は食事を始め、徐々にエリスの表情が和らいでいくのをギルバートはホッとした様子で眺めていた。
食事を終えて片付けを済ませたギルバートは、リュダの元に居たエリスに声を掛ける。
「片付け終わったし、そろそろ出掛けるか」
「はい」
食事中は時折笑顔を見せていたエリスだが、やはり一人になると色々考えてしまうのか、またしても表情が暗く元気も無い。
そんな彼女を元気づけたいギルバートはどうすればいいのかを考えるも、良い案が思い浮かばずこちらはこちらで悩んでいた。
とにかく今は気晴らしに散歩に出掛けるのが一番だろうと、二人はリュダを連れて自宅を出発した。
暫く宛もなく歩きながら移動していたものの、ふとギルバートはある場所にエリスを連れて行こうと思いたつ。
「エリス、行きたいところがあるからリュダに乗って移動しよう」
「……はい」
もう何度かリュダの上に乗っている事もあり、乗り降りがスムーズになったエリスはギルバートの言葉に頷くと、彼の手を借りてリュダの上に跨り、間髪いれずにエリスの後ろに座ったギルバートは手綱を握って何処かへ向かってリュダを走らせ始めた。
「あの、何か、お買い物ですか?」
「いや、そういう訳じゃない。お前に見せてやりたい場所があるんだ。エリスなら、きっと気に入ると思う」
それだけ答えたギルバートはそのまま前を見てひたすらリュダを走らせていくので、これは着いてからのお楽しみという事なのだろうと悟ったエリスはそれ以上聞く事をしなかった。
それから数十分、木々に覆われた森を抜けた先には綺麗な花が咲き誇る野原が現れた。
「綺麗ですね」
「なかなかの景色だろう?」
「はい! ここが、私に見せたかった場所ですか?」
「ああ。 お前が教えてくれた丘に比べると大した事は無いかもしれないが、ここも人があまり来ない、落ち着ける場所だ。心を休めるにはいいところだと思ってな」
言いながらリュダを止めたギルバートは先に降りると、エリスに手を差し伸べて降りるよう促した。
そしエリスはリュダから降りると、辺りを見回しながら普段あまり見かけない種類の花が咲いているのを見つけて興味津々で鑑賞する。
そんなエリスを眺めたギルバートはここへ連れてきた事を良かったと喜び、リュダに持ってきた水を飲ませてからしゃがんで休むようにとの意味を込めて身体を撫でてやる。
撫でられたリュダは意図を理解してその場にしゃがんで眠る体勢を取ったので、そんなリュダに寄りかかる形でギルバートも腰を下ろした。
「夕方まで好きに過ごすといい。花を摘んでも構わないし、シートとブランケットを持ってきているから、眠くなったら横になっていてもいい」
声を掛けられたエリスは少し悩むような素振りを見せながらもリュダに寄りかかるギルバートの隣にやって来ると、
「あの、私もここに座っていいでしょうか?」
そう遠慮がちに尋ねた。