不良男子はお人好しちゃんを振り向かせられない。
第二話
○家
◇次の日の朝


澪「ふぁー……おはようお母さ……」


階段から降りてくるなり、蓮夜のことをお母さんと呼んでしまいフリーズする澪。


澪「わっご、ごめん!!蓮夜くんと暮らすんだった!」

蓮夜「ったく、しっかりしろよ」

澪「本当ごめん……っていうか、朝ごはん作ってくれたの?」


現在、蓮夜が料理を机に運んでいるところだった。


蓮夜「……自分の分だけ作った。お前のはあまりもんだ」

澪「そ、そっか」
(その割にしっかりしたもの作ってるけど……もしかして蓮夜くんって、ツンデレ?)

澪「……えっと、じゃあいただきます」


両手を合わせる澪に続いて、いただきますと言った蓮夜。


蓮夜(一口ちっちゃ……小動物かよ)


まだ澪への気持ちに気が付かないまま、そんなことを思っている蓮夜だった。

澪(すごい、料理がすぐになくなっていく……)


お互いに食事の様子が気になる。


蓮夜「そういえばお前、いい人だと思われたいって言ってたよな?」

澪「うん」

蓮夜「なんでだ?別に嫌われたっていいだろ、好きでもない奴ら相手なら」

澪「うーん……嫌われるの好きじゃないし、いい子にしてるのが一番楽って知ってるから」

蓮夜「……そうかよ」


澪「それよりさ!今日学校一緒に行かない?」

蓮夜「はっ!?な、なんで!」

澪「こっちの方に住んでる子あんま居なくてさ……電車も1人で乗るのいつも不安だし、居てくれたらいいなって」

蓮夜「……別にいいけど、お前はそれでいいのか?」

澪「えっ?」

蓮夜「俺、悪い噂とか流れてるし……」

澪「うーん……別に蓮夜くんのこと嫌いじゃないし、悪い人だとは思わないから……いいかな」

蓮夜「……そうか」
 (な、なんだそれ……!!初めてだぞ、俺を悪い人じゃないっていうの!!)


蓮夜は意外とピュアである。


◯回想・蓮夜幼少期・幼稚園
◇夕方


男の子1「だからさ、蓮夜って変だよな」

蓮夜「え……?」

男の子2「べんきょーできるし、うんどーもできるし……女みたいな顔してるし、みんなとちがう」

蓮夜「お、女みたいな顔……」

男の子1「もうお前と遊ぶのやめるわ、なんか怖いし」

蓮夜「そ、そんな……」


それからはいじめられることも増えて、

何かあると……


男の子1「えーん……!!連夜がボール投げてきたぁ!」

先生「だめでしょ蓮夜くん!」


蓮夜が全て悪者にされるのであった。


蓮夜(僕、何もしてないんだけど……)



それから小学校に言っても、中学校に行っても。

御曹司の自分に取られる態度が嫌になり、どんどん捻くれていった。


そんな中出会った澪に心を奪われてしまった。

見れば、どんな人か大体わかってしまうようになってしまったからこそ、澪との出会いは奇跡だと思ったのだ。


◯回想終了



澪「じゃあ着替えてくるね。おいしかったよ」

蓮夜「お、おお」
 (く、食うの早ぇぇ!あの一口のサイズで俺より先に食べやがった!さっきは俺の方が全然少なかったのに!)


一方、階段を登る澪。

澪(めちゃくちゃ美味しかったな朝ごはん……)

    ↑
意外と食べるのが早い澪。



それから、お互いに制服に着替えて。


○玄関


澪「行ってきます〜」

蓮夜「……行ってきます」


家を出た2人。



◯バス


澪「今日は空いててよかったね〜」

蓮夜「そ、そうだな」


2人用の席に一緒に乗り込んだ2人。

蓮夜はなぜか心臓がバクバクしていた。


蓮夜(めっちゃいい匂いするんだけどコイツ……小せぇし、潰れねぇかな……)

澪「綾野くん?」

蓮夜「あ?」

澪「そ、そんなに私の方見てどうしたの?も、もしかして……」

蓮夜「ば!?ちげーよ!!」

澪「そ、そう?よかった」
 (汗臭くなくて……)

蓮夜(す、好きなわけねーし!!)



◯電車


澪(せ、狭い……どうにか綾野くんが庇ってくれてるけど……)

電車の隅の方で、澪を壁ドンするように庇う蓮夜。


澪「……あ、綾野くん、ありがとう」

蓮夜「……別に、お前のためじゃねーし」

澪「あはは……」
(その割に結構庇ってくれてるけどね)


蓮夜(ち、近けぇ……!!)



◯学校・靴箱


絵菜「おはよー!澪!」

澪「絵菜!おはよう!」


蓮夜が1人でどこかへ行こうとする。


澪「綾野くん!いや……蓮夜くん!」」

蓮夜「っ!」
 (な、名前呼び……!?)

絵菜「げっ……!!不良!!澪関わらない方がいいよ」

澪「蓮夜くんは優しいし大丈夫だよ!それに、私の弟だから」

その言葉になぜか胸が痛んだ蓮夜。


蓮夜「……弟じゃねぇから」

澪「えっ……」


ガーンとショックを受けた澪。冗談半分で言ったつもりが、バッサリと切り捨てられてしまった。


蓮夜「じゃあな。帰りも待ってる」

澪「……!うん!」

絵菜「ん……え?お、弟!?」

澪「うん」


去ってしまった蓮夜の様子を伺い、大声でそう言った絵奈。


絵菜「一体何がどうして!!」

澪「お母さんが再婚したの。その相手の息子が蓮夜くんだっただけ」

絵菜「は、はぁ……随分と要約しましたね……着いていけんよ」

澪「ごめんごめん。あ、今日木崎くんに勉強教えなきゃ行けないんだ!行くね!」

絵菜「ああ、そういえばそう言ってたね!いってらっしゃい〜」


急いで教室に向かう澪。


◯教室


珍しく蓮夜が教室内にいることを確認して、なんだか安心していた。


澪「木崎くん」

美夏「わっ、澪ちゃん」


きゅるきゅるに可愛らしい大きなピンク色の目をしていて、身長はやや低め。ふわふわの黒髪。学園内でもファンクラブを持つほど人気の木崎美夏だ。

美夏「おはよ〜ありがとうね」

澪「ううん!それより数学の勉強でよかったんだよね?」

美夏「うん!よろしくね〜」

澪「じゃあ早速だけど、この公式はわかる?」


澪が勉強を教える。

学園内でも、平凡だけど優しくて好かれている澪。


妬む人もたまにいるけれど、基本的にそう言うことはなかった。


蓮夜(んだよアイツムカつく……近くねぇか?)


澪の方に近づいていく蓮夜。


蓮夜「おい」

澪「わっ、蓮夜くん」


澪のその声にあたりがざわっとする。


モブ1(な、名前呼び!?)

モブ2(やばいやばい、宮乃さん消されちゃうよ!!)


澪「どうしたの?」

蓮夜「あー……腹減った」

澪「ふふ〜んそんなこともあろうかと」

蓮夜「……は?」


カバンの中から小さなポーチを取り出した澪。その中には大量のクッキーが入っていた。


澪「どうぞ、これ。好きなだけ食べて」

蓮夜「……」


バッとそれを奪い取り、席に戻って行った。


蓮夜(ムカつく……そんなに俺に邪魔されたくねぇのかよ)

ボリボリ澪の手作りクッキーを食べながら、ずっと睨みつける蓮夜。


美夏(なんかアイツめっちゃ澪ちゃんのこと見てるし……怖。でも……)

美夏「わっ」


近くを通った人にぶつかってしまい、澪の方に倒れた
美夏。


見事に澪に抱きつく形になってしまったのだ。


蓮夜「なっ!!!」
 

あたりがビクッとする。


澪「わわわ木崎くん大丈夫?」

美夏「う、うん……ごめんね澪ちゃん」

澪「私は大丈夫だけど……」

美夏(うわやば)


澪の後ろにバチバチの蓮夜が立っている。
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