不良男子はお人好しちゃんを振り向かせられない。
第三話
◯教室


澪「……え?蓮夜くん?まだお腹空いてるの?」

蓮夜「……澪は、コイツのことが好きなのか?」

澪「木崎くんのこと……?友達として、好きだけど」
(ん……?今澪って!!)

蓮夜「じゃあ近けぇよ。いいかお前」


美夏を指差した蓮夜。


蓮夜「コイツは俺の姉なんだから、手出すなよ」


辺り一同(((姉!?)))


目をぱちくりさせる美夏。


美夏「嘘、兄弟なの?」

澪「性格にはなった、だけどね」

美夏「あー……そういうことね。じゃあ弟くん、僕……宣戦布告しちゃおうかな」


澪の手を引き、抱きしめた美夏。


澪「え、えええっ?!」

美夏「僕、澪ちゃんが好きだから」

蓮夜「っ!」


カッと頭に血が上った蓮夜。


澪「れ、蓮夜くん落ち着いて!!」


どうにか美夏の腕から脱出をして、拳を振り上げる蓮夜を止める澪。


ガラガラと教室のドアが開く。


担任「お、珍しいな綾野〜さっさと席着け〜?」

蓮夜「先生、俺澪の隣じゃないと授業受けれません」

担任「そうかそうか、お前の父さんには世話になってるからな〜田村、宮乃と席変わってくれー」


田村(♂)は現在蓮夜の隣の席の生徒だった。


田村「はーい」


特に嫌がりもせずに変わってくれた。

おそらく、その理由は澪の隣の席にいるのが……


長い黒髪、赤い瞳。

分厚い唇に理想的なスタイル。


七村 美玲という、学園内でも名を轟かせる美少女だからだろう。



カバンなどを持ち、美夏から離れて蓮夜の隣の席に移動した澪。


澪(平常心平常心……!)


いくら恋愛感情のない美夏が相手だからとはいえ、ビジュアルは完璧。ドキドキしてしまっても仕方がなかった。


澪(いい匂いしたなぁ……)

蓮夜「……おいバカ姉貴」

澪「へっ!?」

蓮夜「今またアイツのこと考えただろ……」


ゴゴゴゴ……とオーラを放ちながら澪を見つめる。


澪「そ、そんなことないよ〜?」

蓮夜「……まあいい」


ふんっとそっぽ向いた蓮夜。


◇授業開始


澪(あ……!!蓮夜くん寝た!!)


つんつんと蓮夜の腕をつついた澪。

ビクッと震えて起きた蓮夜。


蓮夜「な、なんだよ……」

澪「授業、受けて」

蓮夜「ふん、嫌だな」

澪「……じゃあ、今日一緒に帰らないよ」
 (こんな脅し文句効くかわかんないけど……)


その単語を聞いた瞬間、目つきが変わる。


蓮夜「……やだ、わかった。授業受ければいんだろ。シャーペン貸せ」

可愛らしいピンク色のシャーペンを渡す澪。
おまけにうさぎまで描かれている。


蓮夜(コイツ……)


澪はくすくすと笑っていた。


蓮夜(覚えておけ……!!)

澪(どうにか勉強してくれそうだし、よかった〜)



◯昼休み絵菜「澪〜お昼しよー」

澪「うん!あ!そうだ!」


どこか行こうとした蓮夜の腕をパシッと掴んだ澪。


澪「蓮夜くん、これ。冷凍食品ばっかで口に合うからわかんないけど……」

蓮夜「っ!!い、いらねぇよ!!」
 (ひ、昼飯用意してくれてた……!?)

澪「でも食べ盛りなんだから。明日から私が作るし、今日ぐらい我慢して食べて」

蓮夜(しかも明日から手作り弁当かよっ!!)

絵菜(これはもしや……恋では!?)



○階段

蓮夜(ったく!!なんだよあのおせっかい!!)


結局お弁当はもらった。


バンッ

蓮夜が誰かとぶつかる。

ピンク色の髪。水色の瞳。ピアスもばちばち。


蓮夜「チッ」

?「あ?なんだてめぇ」

蓮夜「お前こそんだよ」

?「俺は水無瀬蘭だよしらねぇのか!!」

蓮夜「知るわけねぇだろ!!」


バチバチな2人。

ただし数分後———


蓮夜「マジわかるお前最高だよ」

蘭「いやマジそれな。もう友達だよ俺ら!!」


お互いに御曹司であり不良だということに気がつき、意気投合した様子。


蘭「ってかさー……彼女できたことある?」

蓮夜「興味ねぇ、そういうの」

蘭「でも友達と言えば恋バナだろ?なんかねぇのかよ」

蓮夜「あー……わかんねぇ」

蘭「身近にいる女とか」

蓮夜「女に興味ねぇけど……あ」

蘭「なんだ、あんのか?」

蓮夜「義姉がいる。同居してんだけど、おせっかいでちっこくていい匂いして、変なヤツなんだよ。いろんなヤツに気に入られたいって」

蘭「あー……俺姉じゃないけど好きな人がそうだわ。何事にも真剣だし、誰にも優しいんだよなー」

蓮夜「好きな人……?」

蘭「ああ。ってかお前義姉のこと好きなんじゃね?」

蓮夜「はぁ!?そんなことあるわけ……」
(いや……言われてみれば、そうかもしれない……)


自覚してしまった蓮夜は、しばらく蘭に話を聞いてもらったのだった。

◯帰り道


澪「ごめん蓮夜くん!遅くなっちゃった!」

蓮夜「別にいい。行くぞ」

澪「うん!」


バス停まで歩き始める。


澪「そういえばお昼ご飯、1人で食べたの?」

蓮夜「俺だって友達ぐらいいる。今日できた」

澪「え!おめでとう!どんな子?」

蓮夜「……俺みたいなヤツ」

澪「不良仲間かぁ〜」

蓮夜「ハッキリ言うんだな」

澪「でもお姉ちゃん嬉しい!」


るんるん気分な澪。そんな澪の手首を掴んで、止めた蓮夜。


蓮夜「……やっぱり、兄弟って言うのは嫌だ。澪、俺はお前が好きだ」

澪「……へ?」
< 3 / 16 >

この作品をシェア

pagetop