大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

「桜川くん」


「あ、田辺部長」


 恰幅のいい、おおらかな田辺部長だった。


「社内メールは、もう見たかな?」


「あ、今確認中で…」


 私の言葉に、田辺部長は、うん、と頷く。


「ちょうどメール見てくれてるね。そこにも書いてあるけれど、桜川くんの移動の件でね、」


 田辺部長の言葉に、私は目を丸くする。


「え!?私が移動ですか!?」


「あれ、今メール見てたんじゃないの?」


 私は慌てて部長からパソコンの画面に視線を戻す。


 『人事異動のお知らせ』とタイトルに書かれたメールには、以下の内容が記されていた。



 『本日、4月1日付で下記の者を移動とする。
   総務部 桜川 美織 → 社長 秘書』



「……えええ!?私が社長秘書ですかっ!?」


 あまりに信じられなくて、私は何度もメールを見返してしまう。


 桜川 美織。


 確かに私の名前が書かれている。


 総務部から、社長秘書、って……そんなことある!?!?


 未だに信じられない私は口をぱくぱくさせながら、田辺部長を見上げる。


「ぶ、部長……こ、これ…」


「そうなんだよ、急でごめんねぇ。桐生社長の希望でねぇ、桜川くんの移動が決まったんだよ」


「な、なんで私が…??」


「さあ?総務部でも頑張ってくれていたし、それが評価されたのかなぁ…」


 そんなわけあるかいっ!!


 田辺部長ののんびりとしすぎている見解に、私は心の中でツッコみを入れる。


「わ、私、秘書の仕事なんてこれっぽっちも知らないですよ…?」


「まぁまぁその辺は桐生社長に聞いてみてよ。ちょうど桜川くんをお呼びだよ」


 私はぽかんとした頭のまま、社長室へ連れて行かれた。


 どうして、どうして私が社長秘書…!?


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