大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

「桜川、憶えてない?俺だよ、俺」


「え??」


 急に砕けた話し方になった桐生社長は、私の元へとやって来る。


「桐生 蒼弥。高校の時、一緒だっただろ?」


「え…」


 桐生 蒼弥。高校の時、一緒だっただろ……???


 私はその言葉を何回も咀嚼して、自分でも青ざめていくのを感じた。


「え、え、桐生、くん……?」


「そうだよ、生徒会で一緒だった桐生だよ。とっくに気が付いてると思った」


 桐生社長の笑い方が、記憶の中の当時の桐生くんに重なった気がした。


 同時に、彼と犯してしまったあの放課後のことも、鮮明に思い出された。


「桜川、久しぶり」


「あ、う、ん…久しぶり」


「桜川、高校の同窓会に一回も顔出してないだろ」


「そ、そうかも…?」


 出すわけない、出せるわけない。


 だって私はずっと、桐生くんに会いたくなんてなかったんだから。


 あの時のこと、桐生くんはきっとなんとも思ってない。


 だからこそ、こんな風に簡単に声を掛けられるんだ。


 私がどんな気持ちになったかなんて、考えもしないで。


 当時感じていた怒りが、また沸々と蘇ってきた。


 私にとって大切な初めてを、遊びまくってた桐生くんなんかに奪われてしまったこと。


 私はまだ、許してなんかない。

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