大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~

 連れて来られたのは、夜景の見える、THE高級なお店だった。


「こ、こんな高そうなお店、来たことないんですけど…」


 私は萎縮しっぱなしである。


「そんな緊張しなくても大丈夫。俺の行きつけだから、リラックスして食べたらいい」


 リラックスって…。


 できるわけないでしょ!こんな高そうなお店で!テーブルマナーにも気を遣うし、味わってる余裕なんてないよ…!


 私は桐生くんへの文句を心の中でぶつける。


「ここのワインは絶品だぞ」


「い、いただきます…」


 ワインなんて普段全く飲まないので、絶品と言われてもいまいち分からない。


 桐生くん、いつからこんなセレブに…。


 と思ったけれど、たしか高校の時もどこぞの企業の御曹司だとか、騒がれていた気がする。


 まさかブルーホールディングスの社長の息子だったなんて、当時は全然知らなかったな…。


「あれ、このワイン…」


 美味しい、と思う。ワインなんて数えるほどしか飲んだことはないけれど、このワインは飲みやすくて、後味もスッキリしているというか。私はこういうの好きかもしれない。


「どうだ?美味しいだろ?」


「あ、はい…美味しいです…」


 何故か自分のことのように喜ぶ桐生くんを見て、高校の時のことを思い出した。


 あれは確か、新発売だと話題になっていた炭酸ジュース。


 うちの高校の自販機にも入荷していて、みんなこぞって飲んでいたっけ。


 私は炭酸ジュースが得意ではなかったけれど、桐生くんが無理やり「一口飲んでみろ」と言うので、一口もらったのだ。


 それが思ったよりも美味しくて、私もその炭酸ジュースを気に入ってしまったんだ。


 その時の桐生くんも、今と同じように「美味しいだろ?」と言って笑っていたっけ…。


 ってなに思い出に浸っているの私!


 高校の時のことなんてもう絶対に思い出したくなんてないのに!

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