大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~
「心配しなくても、何もしない」
「え?」
「俺はソファで寝るから」
桐生くんの発言に、私はまたも目を丸くしてしまう。
え?あなた本当にあの桐生くん?
警戒しつつも、私は渋々シャワーを浴びて、布団に戻る。
「おやすみ、桜川」
「お、おやすみなさい…」
本当にソファで寝るつもりなのだろうか。
こんなにいいお部屋で、こんなにいいベッドだというのに。
なんだか申し訳ない気持ちになってきた。
桐生くんのことはまだ全然許してはいないけれど、ご飯も出してもらった上に、迷惑まで掛けて、当人をソファで寝かせるなんて…。
私はふらつきながらも、桐生くんが横になっているソファまで歩みを進める。
まさかもう寝ちゃったとは思わないけれど、私は小声で話し掛けた。
「桐生くん」
私の声に、ぱちっと目を開ける桐生くん。
「あの、…よかったらベッドで一緒に寝ませんか…?」
自分で口にしておいて、これはちょっと誤解を招くのでは?と思い、慌てて付け足す。
「あ、あの、迷惑ばかり掛けちゃったのに、桐生くんだけソファで寝かせるのは心苦しいというか…申し訳ないというか…。ベッドも広いし、二人くらい余裕で寝られるから…」
お互いに端と端で寝れば、なんの問題もないような気がする。
今日の桐生くんは、私に触れるつもりはないみたいだし。
もしかしたら桐生くんも大人になって、もう高校生の時みたいな軽率なことはしないのかもしれない。そもそも私が根に持ちすぎだったのかもしれない。
そんな風に、少し絆されそうになっていた数分前の私を、殴ってやりたい。
「桜川が誘ってきたんだからな」
私の上に覆い被さった桐生くんは、余裕のなさそうな顔をして私の首筋にキスをした。