大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~
渋々出社して、私は社長室にやってきた。
「おはようございます…」
小さい声で入室すると、桐生くんはもう机に向かっていて、何か書類に目を通しているようだった。
私が入ってくると顔を上げて、「おはよう」と挨拶した。
私はなるべく桐生くんと目を合わせないよう、自分のデスクへと座る。
それなのに、私の気持ちを無視して、桐生くんは話し掛けてくる。
「桜川、身体は大丈夫か?」
「そ!そういうこと普通会社で訊く!?」
思わず立ち上がって反論する私に、桐生くんはいやらしい笑みを浮かべた。
「俺はただ、昨日相当飲んでいたから、二日酔いは大丈夫か、って訊いたんだが」
「なっ…!」
そういうことか…。てっきり昨日の夜のことかと…。悔しいけど、ぐうの音も出ない…。
「昨日の、良かったか?随分気持ち良さそうにしてたけど?」
身体の体温が一気に上がった気がした。
恥ずかしいからだけじゃなくて、これは絶対怒りの感情!
私は桐生くんの言葉を無視して、さっさと業務に取りかかることにした。
桐生くんは少し不満そうにしていたけれど、無視だ無視。