大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~
仕事が一段落して、私は大きく腕を回した。
「コーヒーでも淹れようかな」
立ちあがり、社長室の隣の給湯室へと向かう。
一応社長秘書なので、いつもなら桐生くんの分のコーヒーも淹れてあげるんだけど、今日は私、怒ってますアピールで淹れてあげないのだ!…って、ちょっと子供すぎるか…。
自分のコーヒーを淹れ終わって、仕方ない、桐生くんのコーヒーも用意してあげるか、と思っていると。
「俺の分は?」
真後ろから声が聞こえて、私は飛び上がった。
「ひゃあっ!?」
振り向くとそこには桐生くんがいた。
「随分可愛い声を出すんだな。昨日も可愛かったけど」
桐生くんの余計な一言に腹が立った私は、思い切り肘で小突いてやった。
しかし桐生くんには何の効果もなかったようで、平然としている。
桐生くんは私の腰に腕を回すと、ぎゅっと抱きしめた。
「なっ!?なにするんですかっ!?」
「昨日のこと思い出して、また桜川に触れたくなった」
な、なななな…!やっぱり昔と全然変わってない!なんて軽い男!
私はさっさとコーヒーを淹れると、マグカップを桐生くんに押しつけた。
桐生くん、高校の頃と全然変わってないよ!また私のことからかって遊んでるんだ。なんでこんな人なんかに…!
私は怒りを抑えながら、また仕事に没頭した。