大嫌いなはずなのに。~私を弄んだ御曹司に溺愛されます~
今日は処理する案件が多くて、すっかり定時を超えてしまった。
桐生くんも午後からは打ち合わせが多く、外出したきりだ。
おかげで私はリラックスして仕事ができているので、大変ありがたいけれど。
「そろそろ帰ろうかな…」
パソコンを閉じ、帰り支度をしていると、社長室の扉が開いて、桐生くんが帰って来た。
一応「お疲れ様です」と声を掛ける。
桐生くんは私に目を向けると、「ああ、まだ残っていたのか」と酷く疲れているような声で呟いた。
「もう帰るところです、お先に失礼しま、」
さっさと出ようとしたところで、桐生くんに抱きしめられた。
「な、なにを…!」
「少しチャージさせてくれ…」
チャージ!?なにを!?
混乱する私を、桐生くんは優しく抱きしめる。
どうしてこんなに私を愛おしそうに抱きしめるんだろう?
ただ私をからかって遊んでいるだけで、都合のいい女だと思っているくせに。
桐生くんのことなんて嫌い。
それを拒めない私はもっと嫌いだ。